ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2009年12月29日(火)
理解されてから夕焼けがいちだんときれいに思えるようになりました
 青空の澄みわたった冬のある日、高校生の☆☆さんと会った。しっとりとした文章で、気持ちを語り、そして、歌を1曲聞かせてくれた。

  とても空が青くていい日でうれしいです。虹も出ていました、夢の中で。わかってもらえた喜びのせいで景色が美しく感じられます。ふだんから言いたいことが言えたらいいけどむずかしいですね。言葉の勉強がしたいですがなかなかチャンスがありません。みんなも同じだと思います。(…)ふだんの生活でも話がしたいですがなかなかむずかしいですね。まだまだ理解者が必要だと思います。私の気持ちを言えるのはこの場所しかないので私は不安です。地域の作業所ではどういう人が待っているのか優秀な職員でなくていいからわかってほしいです。理想はまだまだ現実とはかけはなれていますが理想に一歩でも近づければいいなと思います。
 理想の歌を聞いてください。曲です。

私の理想 理解をされて 
小さく夢を 紡ぐこと
冒険好きな 私の心 
逃れられない 定めに負けず
呼びかけてみよう みんなの胸に
みんなもきっと 私の声に 
もっと応えて 私とともに
理想の歌を 歌うだろう
願いはいつも かなわないけど
理想は高く かかげていこう
理想は何も 瑠璃色の
宝石ばかりでは ないことは
私の望みは 知っている
呼んでみよう 未来に向けて
呼んでみよう 私自身に




 理想の歌という題です。リズムは変えてください。私は単純なリズムで歌っています。八分の六かもしれません。(歌うたびにメロディが変わったりしますか?)変わりません。(まちがいはないですか?)そのまま聞き取ってもらえました。なかったです。(…)小さいときからよく歌を作っていたのですが絶対に伝えられないと思ってきましたから夢のようです。信じられませんが事実なんですね。うれしいです。夢のようです。わかってもらえてうれしいです。願いがかなってうれしいです。夢みたいです。望みはわかってもらいたいということだけです。よくわかっているとだけわかってもらえればそれで十分です。よみとるのは技術を必要としているからしかたありませんが、わかっているとさえ思ってくれればともかくは大丈夫ですから。この方法は覚えるにはたいへんな努力が必要だと思いますからそれまでは求めません。理解してもらえたらうれしいです。人間として認められたらうれしいです。願いでしたからうれしいです。またお会いしましょう。わかっていただいてうれしいです。よい時間でした。ありがとうございました。わかっていただけてしあわせです。願いがかなってよかったです。
 夕方がくると寂しいですが、またあしたがあると思うと元気が出ます。夕焼けも大好きです。理解されてから夕焼けがいちだんときれいに思えるようになりました。私らしく生きていきたいと思いますのでよろしくお願いします。またお会いしましょう。
 

 最後の、「理解されてから夕焼けがいちだんときれいに思えるように思えるようになりました」という言葉は、識字の世界ではよく知られた言葉だ。その方は文字を覚える機会を奪われ、ずっと年をとってから識字教室で文字を覚えた。そのことの感動を手紙にたくした中に、「文字を覚えてから夕焼けがきれいに見えるようになった」とあるのだ。
 何度も授業でも取り上げてきたものだが、私自身の目の前で、同じような言葉に出会うとは思っても見なかった。

2009年12月29日 22時27分 | 記事へ | コメント(1) | トラックバック(0) |
| 自主G23区2 |
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タイトルを見て、ドキリとしました。やはり識字の実践に通ずるものがあるようですね。思いが文字や音になることで、自分を離れて、ある意味客観的にとらえなおすことで、さらに深みを増すということなのでしょうか。「夕焼け」の実践を聞いたときからそんなことを感じていました。
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