妻が関わっている埼玉のグループで、こんな文章が綴られた。24歳の女性による、2度目の文章だ。
わたしはさまよつています のらいぬみたいに
ちいさなたましいがきぼうがきぼうにむかつてあるきはじめました
やつとというゆうよりながかつた
うちにひめていきてきてつらかつたときもあつた
ことしはいえてはなしができたからなやんでいたことがついにかないました
先月は私もお会いした方なので、再び書けたと聞いて、心から喜びを感じた。それにしても、「のらいぬ」という表現には、どれほどの深い思いがこめられているのだろう。若い女性が、自らのことを表現するのに、あえて「のらいぬ」という比喩を使うとは…。それに対して、「ちいさなたましいがきぼうにむかつてあるきはじめました」という表現は、つつましい品性を秘めた彼女にふさわしい。
このように書いた後、彼女は、わたしについて次のように尋ねたそうだ。
しばたせんせいはなにのせんせいですか
こくがくいんだいがくはどこにありますか
今回は、お会いできなかったけれど、また、じかにいろいろなこ
とをうかがえたらと思う。
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2008年11月25日 00時20分
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妻が参加している埼玉県内のグループがある。私はいつもスケジュールがあわず、うかがえないのだが、今回はたまたま参加でき、3人の方に関わった。
最初の方は、24歳の女性だった。このグループ自体への参加がまだ日が浅く、2スイッチワープロに挑戦するのは初めてとのことだったが、思いほか、スムーズに言葉が綴られていった。
まず自分の名前を練習として書き、スイッチのことに触れたあと、さっそく気持ちが表現され始めた。母への感謝の思い、なかなか理解されなかったこれまでの日々のこと、しかし、今が幸せであることが語られた。
これまでの、いろいろな方々の言葉と通じ合う内容も多く、この言葉を24年間の沈黙の末に綴ったことの重みをうまく伝えるのは、むずかしいかもしれない。しかし、息を詰めたような時間の流れの中で、ただただ驚いて見守るお母さんを前に、懸命に思いを伝えることの重さは、一言では言い表せないものがある。
すいっちがかるくてやりやすい
おかあさんさんざんめいわくかけてごめんなさい
なかなかいえずにいたけどやっといえた
かみさまくるしかったけどこれでねんがんがかないましてうれしいです
りそうはふたんをかけないでいきていくことです
しんじてくださってありがとうございます
さんざんごかいされてきましたがやっとわかってもらえてほっとしていますおかあさんいままでほんとうにありがとうございました
そのことばをずっといいたかった
うまれてくることができてほんとうによかったです
どんなにからだをつかうことができなくてもほんとうにしあわせです
ねがいはみんながずっとなかよくくらすことです
ありがとうございました
またよろしくおねがいします
二人目の方は、20代の小柄な男性だ。以前一度会ったことがある。茶目っ気あふれる方なので、まだ、少年のようでもあるが、大人としての文章が綴られた。すでに何度も2スイッチワープロには挑戦しているが、なかなかスイッチの介助がむずかしく、長い文章にならないとのことだったが、今回は、長い文章を綴ることができた。
最初は、まずあいさつから始まり、いつもとは違うスイッチの介助の方法に話題が及んだ。
ひさしぶりです
なんねんぶりでしょう
たいけんしたことのないかんかくです
とてもかのうせいをかんじます
どうやっているのですか
おしえてくださいなぜわかるのですかふしぎです
おもっただけでじになっていきます
ここで、ふだん仕事をしているお母さんから、仕事で忙しくて関われないことについてどう思っているのかという質問があった。それに対して彼はこう答えた。
しかたないとおもっています
だってしごとなんだからどうしようもないでしょう
かあさんのためにはそのほうがいいとおもいます
きっといつもきにかけてくれているのはわかってるからぼくはだいじょうぶです
とうさんもそうだとおもいます
しんじているのだからだいじょうぶです
この後、ご両親の仕事の内容にふれながら
とうさんがなまえがゆうめいになればぼくもうれしい
せかいいちになってほしい
と述べた。
おかあさんは、きっと翌日から安心して仕事に向かわれたことだろう。
時間が思わず経過して、もう一人の方と関わる時間がわずかになってしまったが、チャレンジした。30を過ぎたばかりの男性だが、相手の心を洗うような笑顔をもった方だ。「線路は続くよどこまでも」の歌が好きで、以前彼のためにその歌が流れるソフトを作ったこともある方だ。「テープ」という言葉で、歌をリクエストした。それを聞いたあと、2スイッチワープロに挑戦した。
うたすき
おかあさんすき
かけてうれしい
という言葉が綴られた。彼の場合、今、言葉として発せられている単語と、選ばれている言葉との対応が、私たちにはわかりにくいところがある。だから、まるで私たちが勝手に文字を選択しているようでもある。だが、「ん」を選ぶとき、確かに彼は、「ん」と発声した。発声とワープロの選択の表面的なずれは、別の方でも起こっていることだ。文字の選択が進む事の中で、いつか、この意味も明らかにされていくことだろう。
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2008年10月21日 09時26分
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