8年が過ぎた自主グループで
土曜日、都内のある自主グループでの関わり合いがあった。2000年に始まったものだったから8年が過ぎた。子ども一人一人にあった教材を作ろうということから始まった会だ。毎年、夏には、保護者の方々と教材作りの会もやった。木工や電気関係の工作が得意だった父をかり出したこともあった。そんな会が、いつしか、みんなワープロで文章を綴る会になっていった。もちろん選別をしたわけではない。秘められていた力が少しずつ開花していった結果だ。私たちは、夫婦でそれぞれ関わる。今日は、10人の方々と、それぞれ5人ずつ関わった。
障害の重さのゆえに、言葉をもっていながらコミュニケーションをとれないでいるという、孤独な世界は、想像上の存在をその世界に必要としているということを、少なくない子どもたちから教わった。現在高等部の2年の◎◎◎君は、「さとしくん」という「すんだひとみをして」いる「ややとうめいなそんざい」を作り出していた。「みとめられてからは」「ひつようではなくなりました」とのことだ。私たちがまだよくわかっていない子どもたちの心の世界の広がりを知らせてくれるとともに、そのような存在を生み出さざるをえなかった孤独な世界があったことに、胸を痛める。そして、今でも、そういう存在とだけ対話を交わしている子どもたちと、通じ合える道を少しでも早く開いていかなければならない。
ともだちがほしいけどさとしくんがしんでからこまっています。さとしくんはとうめいなそんざいです。ややとうめいですんだひとみをしていました。ふしぎなともだちでさびしいときにあらわれますがなかなかきてくれません。とうめいですがぼくにはみえます。まださみしいけどみとめられるようになったのでみえなくなりました。みとめられてからはねがっていることがつたえられるようになったのでひつようではなくなりました。(後略)
☆☆☆さんは、前回、想像上の友だちについて書いた。以下の通りだ。
わたしてをつかってはなそうとおもってからきぼうがでてきました
ひとのこころがよくわかっていましたからじぶんのきもちをつたえたかったです
ほんとうのりかいをしてくれてうれしいです
みんなもおなじようにかんじているとおもいます
みたこともないふしぎなせかいがひろがってきたかんじです
これからのせいかつがたのしみです
しんじてもらえてありがとうございます
みかちゃんもよろこんでいます
ともだちですこころのなかのわたしのはなしあいてです
なきたいときにはわたしにかたりかけてくれます。
そして、今回は、次のような文章を綴った。現在彼女が通っている通所施設の若い職員の方々も来てくださった。来週の火曜日、みんなでパソコンに取り組むことになっているとのこと。彼女を包み込む輪が確実に広がっている。
つらいことがあってもなかない。もらったいのちだからたいせつにしたいとおもいます。よいかぞくにめぐまれてわたしはしあわせです。のぞみはわかりあっていきていくことです。でもなかなかきもちをつたえることがむずかしいのでまいにちがんばっています。わかってくれるひとがふえてうれしい。わたしのことをみとめてもらえてうれしいです。ほこりをもっていきていくようにしたいです。らいしゅうのかようびのじかんにうまくいくかふあんですががんばりたいとおもいます。くるしいときをのりこえていまがしんらいできるのがりそうてきです。ねむっているとゆめのなかではなしをしています。
◇◇◇君は、話もできるし、現在は、ジョイスティックでATOKのクリックパレットを使って、ワープロで書くこともできる人だ。この4月から社会人になった。小学校の時に出会った彼も、もう精悍な若者になった。そんな彼に、ふと、みんなが使っているスライドスイッチでほとんど手を動かさずに2スイッチワープロで入力する方法を試してみた。話すことやジョイスティックを使った文章は、その都度、大変な労力を必要としているので、楽にやれる方法として提案してみた。この方法は私がたっぷり援助するので一人でやるには適しいない。しかし、彼は、数文字うったところで「すごい」とつぶやいたあと、それまで綴ったことのない、重い文章をつづった。「さべつ」「れいこくなしゃかい」など、彼からこれまでまったく発せられたことのない言葉だった。
せんせいいつもありがとう。つらいことがありました。けっこんのはなしをしていたらばかにされました。めぐまれないひとといわれてくやしかった。こいをすることはじゆうなはずなのにどうしてぼくたちだけけっこんすることができないのだろうか。とてもへんだとおもう。なぜしょうがいがあるとさべつされるのだろうか。ほんとうにおかしいとおもう。うまれてからずっとおかしいとおもってきたけれどだれもおしえてくれなかった。どんなことでもちょうせんしてみたいけどさべつされてきかいがえられない。わかってくれるひともいるけどわかってくれないひとのほうがおおい。かのうせいをしんじてほしいとおもう。しんらいしてくれるひともおおいけどなかなかうまくいかないでいる。れいこくなしゃかいだとおもうけどまけたくないとおもう。
▽▽▽君は、この会が始まった時に高等部3年だった。もう、りっぱな社会人だ。いつも、行きたい場所などについてつづるのだが、きょうは、一味ちがう文章になった。母の日と父の日にはさまれたこの日だからこそうまれた文章かもしれない。温かく見守るご両親の目の前で、心の底からの笑顔を浮かべながら、以下の文章をつづった。
すてきかあさんきれいいつまでもげんきでねとうさんもいつまでもげんきでねおかあさんこれからもめんどうかけます
最後は、「★★ちゃん」でした。すでに成人を迎えている彼女は昔から絵本が大好きで、今でも、絵本をこよなく愛しています。そんな彼女の心の世界は、ファンタジーで満たされているようです。彼女の願いが何だったのか、それはわかりませんが、不思議な世界がつづられていました。
すてきなひとが★★ちゃんのまえにあらわれていいました
よぶこえがするほうをみたら
こどもがののはなそっくりにへいわのほおにめをのはらへむけて
みちのそばににねんまえからさいているはなのおかげで
ふしぎなしずけさあふれて
ねがったことがみたされて
もとめてきたことがかなえられました
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2008年5月25日 09時55分
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自主G23区1 |
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