詩 「たくさんのかなしみ」
小5の○○君。lクリスマスプレゼント、いったい何がほしいと書こうか迷いながら次のような結論にたどりついた。
もしかってもらえるならものがたりのびでおがほしいです
てれびでみられないものがたり
すぺーすわんだーらんどがおもしろかった
すぺーすふりーどろっぷというものがたり
とりっぷかもしれない
ともかくぼうけんものがいいです
今年は、自分の希望を聞いてもらった上でクリスマスプレゼントがもらえそうだ。
そして、話題は、最近担任の先生と取り組んでいる、手を介助されながら書く手書き文字に移っていった。
じをかくのはたのしいです
すばらしいとおもいます
ちいさくかくほうがかんたんです
きれいにはかけなくてもじぶんのことばがかけるのでうれしいです
ざんねんながらまだきもちをかくのはむずかしいけどいつかできるようになったらうれしいです
じがかけるようになったらこのぼくのきもちをじぶんのことばでひょうげんしてみせたいとおもう
きっとできるようになるとおもうのでせんせいよろしくおねがいします
「じぶんのことばでひょうげんしてみせたい」という言葉が、ふと、彼がすでに表現するものを持っているのではないかという気にさせ、詩とか作文とか作っているものがあるんではと尋ねてみた。するとこういう答えが返ってきた。
しをつくったことがあります
そして、時折スイッチを操作する手を止めながら、次の詩をさらさらと書いた。
たくさんのかなしみ
つらいときなみだがほほをながれたら
そらをみてかおをあげてみよう
ほほをながれるなみだもきえていく
ゆめみてみよう
きれいなときのしらないせかい
ふしぎなこえがきこえて
きてのはらにはないっぱいさきほこり
ちいさいころのおもいでがよみがえり
なみだはやがてそらにきえていく
周囲からは、まだ、言葉を理解する力があるかどうかを疑われている彼だが、こんな深い詩の世界を持っていた。あえて聞かなければ書くこともしなかったこの詩は、しかし、即興で書かれたものではない。何かのかたちで、彼は、この詩を胸の中であたためていたのだ。おそらく、誰かに伝えるためではなく、自らに語りかけるために。「たくさんのかなしみ」からどうやって起き上がればいいのか、自問自答しつつ、自らを励ますために作られた、作為のない純粋な詩だ。
とてもうれしいぼくのなかにかくされていたことばのせかいをほりおこしてくれてありがとうございます
子どもたちの中に隠されている奥深い世界の一端をまた、かいま見てしまった。クリスマスプレゼントの話をしている屈託のない彼とは、またちがう、ぐっと大人びた顔した彼がそこにいた。
ところで、この後に来た☆☆さんも、同じ質問をしたら「このせかいにうまれて」という詩を書いた。それは、また、別に紹介するが、その彼女に、○○君の上の詩を見せた。すると、こんな感想とメッセージが返ってきた。
すてきなしですね
どこのそらなのでしょうか
のぞみがきえてしまわないようにがんばろうとつたえてください
わたしもおなじきもちです
詩を通じて二人が心を通わせ合ったすばらしい瞬間だった。
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2008年11月22日 22時47分
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自主G多摩3 |
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