総合講座「差別とアイデンティティ」にて
私の大学の授業に、「差別とアイデンティティ」というものがある。今年で退職を迎えられる楠原先生がコーディネーターとなって、複数の教員が参加する総合講座である。私も、この講座が発足した当初からのメンバーで、10数年が経った。私は、自分の障害の重い子どもたちに対する関わり合いと町田の青年学級のことを毎年、紹介させていただいてきた。そして、ここ数年、町田のメンバーを実際に招くようになってきた。先生の退職とともにこの講座も終わることになるが、その最終年、私は、これまで二つの別々のこととして話してきた話題の間に、一本の橋をかけることができた。それは、パソコンを使って文章を綴る障害の重い方の存在を、青年学級で、今年になって何人も明らかにすることができたからである。残念ながらそのメンバーを夜の渋谷で行われるこの授業に招くことはむずかしかったが、毎年常連のメンバーであるTさんだけは、可能だった。
そして、授業という公開の場で初めて2スイッチワープロに挑戦した。
「差別とアイデンティティ」は6時間目の授業だが、5時間目には、「ボランティアと社会参加」という私の通常の授業があり、みんなには、この2時間、授業をしてもらった。
Tさんの2スイッチワープロは、比較的小さな教室だった5時間目はスムーズだったが、大教室である6時間目は思いのほか難航した。しかし、2時間続けて挑戦して、次のような文章が綴られた。
Tといいます
いま○○○○りょういくえんではたらいています
いまやりたいことは せいかつについてたすけてもらいながら ひとりぐらしをすることです きっとできるとしんじています いっしょにくらしてくれるじょせいをさがしています きもちのやさしいひとをさがしています(以上5時間目)
おとうさんのことがなつかしいです まま ○○○(弟)とくらしていますが けっこんしてどくりつしたいです(以上6時間目)
それぞれ、10分ほどの時間なので、限られてはいるが、たくさんの人の前で、文章を綴るということ初めての挑戦、まずまずだった。
どちらの授業でも、みんなで、たくさん思いを語り、歌を歌った。
「総合講座」の最後の年の、思い出に残る授業になった。
授業の後、研究室でお酒を前に語り合った。16階にある研究室から見える渋谷の夜景は、けっこう美しい。来年4月から、たまプラーザキャンパスに新設される「人間開発学部」に移籍が決まっているので、この研究室からの夜景も、これでお別れだ。
一つの区切りにふさわしい夜だった。
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2008年12月6日 07時36分
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青年学級 |
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