ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2008年12月21日(日)
私は銀世界の中で言葉を伝えられずに迷っている…
 隔月でうかがっている通所施設に通う一人の中途障害の女性がいる。全身の動きを禁じられ、アーというようなあえぐような発声があるのみの方だ。何度か関わって、少しずつ、文章を綴ることができるようになっていたが、今回は、ためらわずに、スピードの速い方法で挑戦した。漢字に置き換え、句読点をつけて紹介したい。
 

 来てくれてありがとうございます。厳しいです。体が使えなくなって。自分の言葉で伝えたいです、気持ちを。柴田さんはどうして言葉が読み取れるのですか。気持ちを伝えたいと思ってきたのでうれしいです。ちゃんとした言葉で自分の気持ちを伝えられたらうれしいです。信じられません、言葉がすらすら書けるのが。気持ちが夢のように言葉になっていきます。自分の力が入ってないのにどうしてわかるのですか。不思議です。びっくりしました。いい方法ですね。いいやり方ですね。
 信じてほしい。夢も希望も聞いてほしい。私は銀世界の中で言葉を伝えられずに迷っている、気持ちが言えず、自分の気持ちを伝えられず、木の上に放り出されてしまった子どものように。自分の気持ちを外部に送ることもできずに、今まで檻の中に閉じられていた。心が今、いい時間の流れを通わせながら、いい時間いっぱい感じながら、聞こえてくる、昔のいろいろな声が。自分の足で歩き、自分の手で何でもやれた日々が、自分色の思い出として。人間だから、気持ちを人に伝えたい、小さなことでいいから。
 聞いてくれてありがとう。不思議です、夢のようです、言葉で話せることが。左の手でもやれますか。ミイラのような人生にお別れです。理解してくれてありがとうございます。自分の言葉言いたかったです。見えていますが、焦点を合わせるのが大変です。気持ちを伝えられてよかったです。気持ちを伝えられて幸せです。今度また、よろしくお願いします。お元気で、よいお年を。


 私は、自分のやっていることが、本当におそろしくなる。私にこのような言葉を聞く資格が本当にあるのだろうか。しかし、この女性の必死の思いに答えるためには、逃げ出してしまわずに、襟を正して、向かい合うしかないだろう。
 

2008年12月21日 00時55分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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