ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2008年12月26日(金)
4人が書いた北風と希望の詩
 私たちの言葉をめぐる取り組みがなかなか理解されないことを心配した○○君は、次のような文章から始めた。

しばたせんせいはきになっていませんか きちんといいたいことがわかってもらえないで
きわもののようにいわれてしまうことに
みちのりょういきを しこうするのはむつかしいということなのでしょうか

 みんなにわかってもらうことのむずかしさと、それでも戦っているつもりであることを伝えると、

きけてよかったです みちのせかいにちょうせんするのはたいへんですね

 と私を気遣う言葉をかけてくれた。ここで、突然、詩のことについて尋ねた。すると、「あります、かけます」という返事。そして、次の詩が書かれた。彼もまた、テーマは北の風と希望だった。彼と関わるのは8月以来のことなので、まだ、北の風の話をしたことはない。ここで、彼が北の風をとりあげるのは、全くの偶然ということになる。(このブログを見ているわけでもない。)

きたのくにからふくかぜは いいひびきをしています
いいひびきをたてながら きたのくにからふいてきます
きたのくにからふくかぜは きたのきぼうをつれてきます
きたのきぼうは きたにすむきたのしかがふかせるかぜです
ちいさいときのおもいでをつれてやってきます
しかはきぼうのいぶきをにんげんにあたえます
きたのしかのきぼうはちいさいときにみたゆめときぼうです
ちいさいときにじぶんじしんできいていたきたのきぼうのしかのこえです
きぼうのきたかせはじぶんにむかってふいてきます
きぼうのきたかぜはきぼうびんかんにさっちして
きぼうのあるところにふいていきます
しろいゆきとしろいちいさなまほうつかいをつれて
きたのくにからきぼうをひとにあたえるために ふいてきます
しろいせかいと しろいのぞみと しろいねがいと ちいさいゆめにきぼうというものを
あたえるためにふいてきます

いいきぶんです いいたいことがいえて いいたいことが じぶんいじょうにはやくかけていきます
ふしぎないいきもちです だいじょうぶです 
きたかぜをいやがるひとはおおいけど きたかぜはきぼうのかぜです
きたかぜにはいきていくのがつらいひとのきもちがこもっています
きたかぜは だからきぼうのかぜなのです
あります

 なぜ、北風が希望の風なのかという説明も、幾人かの子どもたもが書いたことと相通じるものである。そしてもう一つ、詩が書かれた。

ちいさいねがいのきがありました
いいかぜがふいてきて いいはながさきました
いいかぜがふいてきて いいみがなりました
いいかぜがふいてきて たねはじめんにおちました
きぼうのいいかぜは きたのくにからふいてきて
じめんにめをだすようにいいました
いいかぜは いいにんげんは きぼうのいぶきをかんじ
ちいさいころきぼうをかんじていきていたころのことをなつかしくおもいだしました。

ききとってくれてありがとう じぶんのきもちをしずめるためにつくったものです
きぼうをなくさないためにかいています いいきもちです

 傍らでは、弟の▽▽君が、筆談の練習をしていた。いろいろな会話をうまく書き取れていた。ところが、何か言いたげだったので、パソコンを出してみた。すると、にいさんが詩を書いたことを聞いていたのか、すぐさま、詩を書き始めた。

ちいさいぼくはにんげんとしてうまれ きぼうをもっていきてきた
きぼうはきたのくにからやってきて いいちいさいぼくにねがいをくれる
いいちいさいぼくは きぼうをきたのかぜからもらい
しずかにきたかぜのおとをきいている
きぼうのきたかぜはちいさなぼくをはげまして きぼうをくれる
いいちいさいぼくは きぼうのきたかぜにきぼうをもらい
きたかぜのふらせるゆきを しずかにみている
いいちいさいぼくは しずかにしずかにきたかぜにいしをつたえる
いいちいさいぼくは きたかぜにいのちをちかう
ちいさいぼくは いいちいさいのぞみをかかえて
いいちいさいぼくのじんせいを ねがう
いいちいさいぼくは きぼうのきたかぜとともに
いいしらせをひとびとにつたえる
いいちいさいぼくは いいのぞみをきたのくにのかぜに
いいちいさいぼくは いいきたかぜにいのりをささげ
いいきょうのいのちをかんしゃする
きたのくにからふくかぜにきょうのにくしみをいっそうすることをねがう
きたのくにからふくかぜに
いいじんせいをきぼうにみちたものにすることをちかう。

 「いいちいさいぼく」という表現は、昨日も、別の場所で聞いた言葉だった。小さい自分ながら懸命に自分を肯定しようとする響きがこの言葉にはある。まだ、小2の少年の、懸命によく生きたいという祈りのような文章だ。「にくしみをいっそうすることをねがう」ほどに彼が憎しみを抱いているとも思えないのだが、まったくそういうものと無縁の者が書く言葉でもないだろう。さっきまで、あどけない内容の筆談をしていた彼のこころの中には、こんな世界が秘められていたのである。
 そして、この兄弟の1時間後にやってきた◇◇君は、「しなんのわざがひつようですね。きびしいですね。いいほうほうはないのでしょうか。」と、わかってもらうためにどうすればいいのかということから話し始めた。

いいたいことがなかなかきいてもらえません しんじてもらえません いいたいことがつたわらないと きもちはしずんでしまいます きもちがきらいになっていくのがいやです きちんといいたいことがきいてもらえないといいたいことがいえないといいちいきがきずけません

 そこで、この話にお互いにとどまり続けていると行き詰まってしまうので、話を切りかえて、詩のことを尋ねた。答えは、「つくっています」。そして、次の詩が書かれた。彼は、上述の兄弟が何を書いたかなど、まったく知らずに、さらさらと詩を書き始めた。

しろいいき いいいきを いいかぜにはき いいきたかぜにいう
きぼうにみちたきたかぜさん あなたのいきできぼうをください
きぼうにみちたきたかぜは きたのくにと きたのしずかなゆきたちを
きぼうにすべていろどって いいきぼうのかぜたちを
いいにんげんたちにとどける
いいいき いいしろい いき いいきたかぜ
ぼくにきぼうをください
ちいさいころから いいいきをはきながら 
ぼくはきぼうをしんじてきた
いいきぼうのひかりは きぼうとともにぼくのこころにおとずれる
きぼうのきたかぜと しろいゆきは いいきたのくにからやってきて 
きぼうときぼうとをつなぐ
きたのくにからふくかぜに きぼうのきたのくにのきぼうをきいている
いいいきをはき みんなにきぼうをあたえる
きたかぜにしろいゆきをのせて いいいきをはき 
いいきたかぜにちいさなぼくはねがいをきく。

 そして、詩について、次のようなコメントをつけた。

きたかぜはきたのくにからふくかぜで みんなはいやがるけど きたかぜは いろいろなくるしみをけいけんしたひとにしかわからないけど きぼうをはこぶかぜです きたかぜは だからきぼうのきたかぜです

 そこで、兄弟の詩を読んで聞かせた。

びっくりしました きたかぜをびんかんにかんじとっているひとがいることがわかってうれしい
にんげんはきたかぜをきらうとばかりおもっていました きぼうというものはきもちがしずむときえていきますから いいきぶん しきりにいいきもちがします いいきもちです

 と、率直な感想を述べた。そして、最後にこうしめくくった。

にんたいしてきたけど きぼうがかないました いいきぶんです きもちがすらすらかけて 
いいみいだしです ぼくたちがみんなしをつくっているということにきずいたことは
きもちをしずめるために ぼくたちはしをつくっています
ちいさいころから いいちいさいじぶんを きぼうにみちたにんげんにするために 
きぼうがあれば ぼくたちはいいにんげんになることができます
いいじかんでした きぼうがわいてきました
いいじかんでした いいほうほうです ちいさいころからのゆめでした

 そして、さらに、☆☆さんが、続けてやってきた。彼女は、詩的な表現を何度もしてきた社会人1年目の女性だ。詩のことが話題になっていたのを聞いて、さっそく詩を綴り始めた。

きぼうのきたかぜはきたのくにからふいてきて
にんげんにきぼうをあたえる
しんじていればきっとねがいかなうということを
きぼうのきたかぜはおしえてくれる
いいじぶんになるためにいいきたかぜは
ちいさいわたしにちいさいころからいいきぼうをあたえてくれた
きぼうのきたかぜはいいひとにいいきぼうをあたえてくれる
きたにむかってわたしはさけぶ
きたかぜにむかってわたしはいのる
いいきぼうをくださいと
にんげんとしてうまれ いいねがいをもち
にんげんとして いいゆめをいだき
きもちをきりかえたいとおもっても
いいねがいはなかなかじぶんにはかなわなかったけど
いいきぼうがあればいいじんせいがひらけることを きたかぜにねがう 
ちいさいちいさいわたしに きたかぜはきぼうをくれる
きぼうはきたのくにからやってきていいにんげんにしてくれるいいきたかぜはきたのくにからやってきて きたのくにのきぼうをつたえる。

にんげんとしてうまれてきて きちんとしたじんせいをきぼうをもっていきていきたい
にんげんとしていきてきて にんげんとしてきぼうをもち
きぼうをぎんいろのねがいにかえて いいじんせいをいきていきたい
じしんというちいさいひかりをきぼうによってともして
きぼうのひかりをしんじていきていこう
にんげんとしていきてきてひかりをにじといっしょにきぼうにかえて
しじんのようなきもちでいきていこう
ちいさいちいさいにんげんだけど しじんのようなしずかないのりをささげながら
きもちをしずかにいのりにかえていきていこう
しじんとちいさなわたし ちいさなしじんとちいさなわたし 
いつまでもいっしょにいきていこう
にんげんとしていきてきて にんげんとしていきていく
しじんのようなきもちで きょうもいちにちしじんとしていきることができて
いいいちにちだった
きょうもいちにちきぼうをもっていきていけたことに かんしゃしよう。

 ◇◇君は、じっと、詩に注目していて、途中で、何度か、読み上げると、自分と同じように北風がテーマになっていることを、とても喜んでいた。そして、改めて、☆☆さんにも、◇◇君のものや、○○君、▽▽君のものも聞いてもらった。4人がそれぞれ、独自の個性的な表現を持ちながらも、北風と希望とを共通のテーマにしていることを、心から喜び合った。そして、☆☆さんの、感想。

きょうはたくさんかけてよかった きぼうがわいてきました きぼうがみちてきました
いいいちにちでした いいじかんでした いいみんなのしがきけてよかったです。

 急に冷え込んで、北風が吹き荒れた日だった。私たちの知らないところで、彼らは、北風に希望を重ね合わせて、懸命に生きようとしていた。そして、残念ながらみんなそんな思いを共にする仲間がいることを知らない。みんな同じ思いで生きていることを伝えて、みんなひとりではないことを知ってもらいたいと思う。
 今年で12年目を迎えたこのグループ。こんな日を迎えられるとは、まったく予想だにしなかったことだ。こんなふうに、新しい年に向かうことができることに、心から感謝した。

2008年12月26日 23時40分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
| 自主G多摩1 |
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