ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2009年01月08日(木)
自分で希望していいなら、悔いのない生き方をしていきたい
 今回のグループの中で、言葉の表現をしてもらうのに、大変時間がかかってしまった中3の女の子に、ようやくまとまった文章を書いてもらうことができた。物をつかんで操作をすることができるので、いろいろなスイッチ教材を使って、操作から入ろうとしたのだが、かえってワープロにつなぐことができず、パソコンでは、ノンタンの絵本のソフトを食い入るように見るというところで、何とか納得を得るということが続いていた。しかし、今回の文章にあるように、手の動きは、実は、必ずしも意図の通りに動くわけではなく、勝手に動いていることがあることがわかった。紐が好きとか、何でも振り回してしまうと言われるような動きは、意図に反した動きだったのだ。それが、彼女の理解を大きく誤らせていたと言わざるをえない。そうした誤りに少しずつ気づき始めて、前回、ワープロに挑戦したところ、名前と「かわいい」という言葉を書くと、とてもいい感じでやれた。しかし、また、時間が流れ、今回は、1年ぶりの再会だった。この1年の私の変化は、やはり小さくなかったと思う。相手の力をほぼ抜いてもらった状態で、スライドスイッチの棒を握ってもらい、こちらが積極的に小さくスイッチのオンーオフを繰り返していると、選択したいところで、小さな力が加わるという方法は、彼女のように、いったん力を入れてしまうと、いろいろな動きが起こってしまうという人には、特に、なくてはならない方法だ。
 そして、今回、いきなり、その方法に挑戦した。すると、最初に名前を書いた時点で、的確に、力がこもってきたのである。
 そうして、次のような文章が書かれた。

おかあさんありがとういつも
かのうせいにちょうせんしてくださってありがとうございます
きもちをことばでいいたかった
きもちてでつたえられるとはおもわなかった
(ワープロの音は聞こえていますか?)
きこえています
(画面は見ているのですか?)
みています
きもちがつたえたかったです
きもちうけとめていけじっとにんたいしていました
しんぼうしていたかいがありました
にんたいしてきてよかったです
あかるいあしたがみえてきました
うれしいです
きぼうがわいてきました
てがかってにうごいてしまってがぜんちいさいときからこまっていました
きもちいいです
ちからをいれていないのでだいじょうぶです
(字はいつ覚えたのですか?)
おかあさんがおしえてくれましたこどものころに
(どんな本を読んでもらいたいですか?)
くまのこうーふがよみたい
じぶんできぼうしていいなら くいのないいきかたをしていきたい
じぶんとしてはさいこうのいきかたをしたいとおもうけどなかなか

きもちがいいです

 「忍耐」という言葉が重く響く。私も彼女に忍耐を強いてきた一人であるからだ。
 彼女のことを誤解させる大きな要因である手の動きについても、的確な説明が本人自身からなされている。彼女のような動きをする人に対して、「いやがっている」「すぐ何でも手を出す」「ひものような物が好き」「気が散りやすい」など、たくさんの、的外れな言い方をあちらこちらで、どれだけ耳にしてきたことか。私自身、すべて、本人の意図的な行動と考えて、その意味を解釈してきたことが、必ずしも本人を大切にしたことにはならなかった。すべてが勝手に動いているかどうかということはまだわからないが、そう見ることが必要な運動は多いようだ。
 こうした、とんでもない的外れな関わり合いに彼女はよく耐えてくれた。その「忍耐」が今回の関わりを生んだ。
「自分で希望していいなら、悔いのないいい生き方をしていきたい」という彼女当然の願いの中が、こんなふうに控えめではなく、堂々と語られるような時代を、私たちは、早く呼び寄せなければならない。

2009年1月8日 01時22分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
| 自主G23区2 |
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