ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2009年01月13日(火)
詩人の弟 物語作家の兄
 半年ぶりに、K君、N君兄弟の家を訪問した。まず、半年前とだいぶ方法が進歩して援助のスピードがあがったことを報告し、弟のN君から始めた。
 さっそく、N君が書いた言葉は…。

うれしい きもちいい いきなりできたのでかんげきです ききたいことがあります きちんとしたじんせいをおくりたいけど どうしたらいいですか じぶんでかんがえたことを ねがいながらいきていくことです じぶんがちいきでいきていくためには どうすればいいのですか ちいきでいきるのはむずかしいですか 

 新年早々のむずかしい問いだったが、二つのことを答えた。一つ目は、コミュニケーションがいろいろな人とうまくとれるようになること、二つ目に、ひとりぐらしやグループホームで暮らすための制度や条件がしっかりと整うこととができれば、簡単なことではないかもしれないけれど、できると。そして、手を引き合う方法で簡単なコミュニケーションをとってみた。すると、いともかんたんに手の合図で一音一音拾えていく。お母さんに代わってもうまくいった。そして、彼の感想は、

すばらしいやりかたですね

 お母さんとやっている途中でまるでお母さんとやるのをやめるように手を引っ込めてしまったのでその理由を尋ねた。

うれしくてちからがはいってしまいました

 ここで、N君に詩のことを尋ねた。するとにっこりとして、次の詩を書いた。
 
しろいゆきがふる
しろいゆきがつかれたぼくのこころにふる
きたかぜにのっていいきぼうをぼくにとどけてくれる
きぼうのきたかぜはねがいをかなえてくれるきぼうのきたかぜです
ちいさなぼくだけどちいさいきぼうをねがいながら
ちきゅうのかたすみでいきている
いいちきゅうのきたかぜはいいうちゅうのきたかぜだ
しろいゆきはきたかぜといっしょに
きのうのきぼうをかのうせいにかえてきたのくにからふいてくる
きぼうのきたぜしろいゆきといっしょにやってきて
きぼうをぼくにくれる
いいじぶんになるためにしろいゆきはぼくにはひつようだ
いいじぶんになるためにいいきたかぜがぼくにはひつようだ
ちいさいねがいしっかりもっていきていこう。

 そして詩についてのコメントが続く。

しはぼくにとってひつようなものです しをかんがえているじぶんじしんと いいたいわをすることができます じぶんじしんをきそずけることができます いいきぶんです

 そして、さらにもう一篇の詩を綴る。

きじみたいにそらをとび
じゆうなせかいにたびだとう
いいきぼうをむねにいだいて
きのうのかなしみをきぼうにかえて
きじのきもちはきじしかしらない
しにゆくとりにしのちいさいかなしみをちいさくにおわせながら
きじはそらにとびたっていく
じゆうとねがいはきじのきぼう
しろいねがいをむねにいだき
ちいさなしあわせにむかって
しからのさそいはじゆうにきりすて
いきていこう。

いいきぶんです きもちいいです いいほうほうですね いいちからがわいてきました

 そして、兄であるK君に交代した。

きもちいい ひとりでやるよりかんたんです げっとしたかんじですきぶんがいいです ふしぎですかんがえただけでことばになっていきます ちいさいころからのゆめでした きもちをことばでつたえることが きぶんがいいです きもちがすらすらかけてきぼうがわいてきました きぼうがねがいにかわりました きちんとしたことばをもっているのに ひとにばかにされてくやしいです 

 そして、詩についてのこちらの問いには、次のように答えて、ものがたりを作った。

しはつくっていませんがものがたりならつくっています にちじょうせいかつのつらさをわすれるために じぶんのきもちをしずめるために じぶんのちいさなねがいをたいせつにするために じぶんのゆめをたいせつにするために にんげんとしてひんかくをうしなわないために いいきもちです

ちいさなしじんが ねがいをゆめにかえるために たびにでました
しじんのひとりごとに ちいさいころのじぶんの
ちいさな いいねがいがきこえてきました 
しじんのしはしずかにじめんにしみこんで 
じめんにきえていきました 
しじんのきぼうは 
にほんじゅうにすむさびしいひとにきぼうをあたえ 
にほんじゅうのしずんでいるひとに きぼうをもたらすことです
じんせいにつかれて ちいさなためいきをついているひとに ゆめをあたえ 
ちいさななみだをながしているひとに ちいさなじしんをあたえます
ちいさなきぼうをあたえることはむずかしいことですが 
しじんは にんげんにじしんをあたえるためにたびだっていきます
にんげんにはよくぼうがあるので 
しじんのねがいはなかなかかないませんが 
きぼうにむかっていきていこうとかんがえています
しじんにはいいねがいがたくさんあるので
きぼうをうしなうことはありません
しじんはちいさなゆめを ちいさいちいさいきぼうにかえて
きたをめざしてたびだちました。

 手を引き合う方法はK君とも成功。
 詩人と物語作家の誕生だ。




 

2009年1月13日 00時24分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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