青年学級2月1日のできごと
青年学級の活動も年度末が近づいてきた。3月の成果発表会、そして、5月には、わかばとそよ風のハーモニーコンサートが控えている。
朝のつどいの中で、まず、Hさんにパソコンを挑戦した。彼は、いわゆる「自閉」と呼ばれる方。入所施設で暮らし、仲間につきそわれるようにして毎回公民館にやってくる。彼の気持ちの表現は、一度も聞いたことはなかった。
いいやりかたですね
うれしい あきらめていました ことばがはなせるとはおもいませんでした
さびしい だれもきもちをりかいしてくれないから
かあさんにあいたい いきたい はか いきていたらことしではちじゅういち
きになっています さみしがっていないか
きぼうがでてきました
ききたいことがあります かのじょはできますか
しばたさんはけっこんしていますか あいしていますかかのじょを
かあさんといっしょにがいこくにいきたかった
だきたいです かあさんを
ちいさいころからはなしたかったです
そんばかりしてきたので そんしたのをとりもどしたい
すんだことはしかたないけど にんげんとしていきていきたい
じぶんのきもちをいいたいです
いいあかるいかぜがふいてきました
彼は、すでに母親を亡くしている。小刻みにスイッチを動かす手に力が入るので、ところどころ、読み取りにまちがいがあるかもしれないし、母親の年齢のところは、自信がない。しかし、母への思いが、切実に伝わってくる。
集いで書いたのはここまでだったが、活動の途中で、もう一度機会があった。
きもちいいいいすいっちですね
(コース活動で取り組んでいることについて)
かんきょうもんだいはちきゅうのおんだんかです
きおんがあがってしろくまがこまっています
(施設での農作業について)
のうさぎょうがたいへんです なかなかちいさいさくもつはおおきくなりません
いつはがかれるかしんぱいです
(施設の周りの環境の変化について)
いえ いっぱいたって あいぞう(愛憎)にあふれるようになった
しぜんはこころがやすらぎます
きはこころのかなしみをいやしてくれます ちいさいときからきがだいすきでした
いいにんげんになることがゆめです あきらめていました
いいたすけがあらわれました
きっとかあさんもてんごくでよろこんでくれているでしょう
いいきぶんです
Mさんはせっかちですがやさしいひとです
すてきなひとです きちんとしています いいひとです
しっています ちかくにすんでいました いいひとです
たのみたい すいっちを
(途中手をとってやる方法も試みた。その感想は、)
いいすいっちなのであれもいいけどこちらのほう(手を取り合う方)がかんたんですはい
なかなかコースは一緒にならなかったHさんだが、もうつきあいは長い。言葉がないことは、自明として、つきあってきてしまった。一つ一つの言葉が、重い人生を伝えてくるようだ。
そして、お昼頃、Oさんが登場した。障害の重い人として、ずっと関わって来た方だが、今年度は休みが多くて、久しぶりだった。Oさんと同じタイプと思われていた人たちがみんな言葉を表現したから、Oさんが同じように言葉を表現するであろうことは、予想ずみのことであった。来るなり、さっそく、パソコンに挑戦した。そして、次のような文章が綴られた。
いいね なぜことばがあるとわかったの きぼうがでてきました
いいたいことがいいたいとおもってきました
かあさんにつたえてください きかせたいことがあります
いじいじといきていくのはいやなので きちんといしをいってあかるくいきていきたい
からだがうごかないけど いしがありますから きもちをいいたいとおもってきました
きもちいいです
ぎせいになりたくない ひのあたるところがほしい
きびしいです いまのせいかつは
いいたいことがいえなくて
てではなせるとはおもわなかったのでかんどうしています
いいほうほうですね うれしいです きもちがつたえたかった
ちいさいころからのゆめでした うれしくてなみだがでてきました
じぶんのきもちがいいたかった くやしかったけどきぼうがわいてきました
しばたさんはどうしてぼくがことばがわかったのですか
なぜぐっちゃぐっちゃのぼくなのに
ぎせいになるのはいやです
ひかりがさしてきました ちいさいときからのゆめでした
いきるきぼうがわいてきました
きのうのくるしみはかこのものになりました
りかいされてこなかったけどこれでねがいがかないます
じぶんをひょうげんしたかった
いしがいいたかった
いいたいことがいえたらいいとおもってきたけど
いいたいことがいえそうでうれしい
きかいがほしい きかいがあればだれとでもやれるから
せいねんがっきゅうのときにはふつうにできるのですか
うちでもやりたい よかったらうちにきてください
すばらしい かあさんにつたえてほしい
きもちがいいたいからきもちあふれています
いいうたです わかる
きいてくれてありがとう
小柄なOさんは、いつも車いすで天井を向いていることが多く、天井のライトのきらめきが好きだなどと言ってきた。そういう姿は、以前は、なかなか言葉の存在を感じさせる姿ではなかったが、この日、パソコンで気持ちを綴り終えたOさんは、きりりと前を見つめ、意志を備えた人として、誰の目にも映っていた。
もう一人は、定時制高校まで通った「自閉」とされるHさん。最近傷つくことがあって、お見えになっていた。若いスタッフのIさんが、ぜひ、気持ちを聞いてくれという。自信はなかったが、むしろHさんは、積極的に近づいてきて、すぐに綴り恥得mた。
Iさんいつもありがとう
まっていますにんげんだからいしがあります
いしをいいたいです
ぎもんがあります
ぎんのいろのぐるーぷはにちようびにはこないのですか
しらないひとたちです
ねているときにやってきます
なんねんもまえからです
いえです
みたこともないようなふくをきていじわるなことをいいますがなにもしません
いきなりきていろいろなことをいいます
ちいさいときからきてはこまらせます
いちにちきもちがおちつきません
いいやりかたがあったらおしえてほしい
がっきゅうのひはきません
ちいさいときからふしぎでした
いいきもちです
しにします
ききたいことがある
いいかぜはどこからふいてきますか
きっときたからふくでしょう
ちいさいひかりがさしてきて
いいみらいがひらいてきます
いいにんげんはどんなかがみをもっていますか
きぼうがうつるかがみですか
じぶんのきもちがうつしだされ
きもちがかなうかがみです
いいかぜはどちらのほうからふいてきますか
きたからきっとふくでしょう
じぶんのいいたいいろいろなきもちをことばにして
いいかぜはきっときたからふくでしょう
きたのくにからふくかぜは
きぼうとゆめをはこんでくるでしょう
きぼうとりそうをのせて
きっときたからふくでしょう
きぼうとあいをのせて
きっときたからふくでしょう
あいというのはふしぎなことば
ちいさなこころをおおきくしてきぼうをくれます
ゆめというのはふしぎなことば
じぶんのしずんだこころをあかるくする
きぼうのきたかぜみつけたら
かなしみしずかにきえていく
いいきもちです
きぼうがでてきました
みていました
やれたらいいとおもっていました
わかります
ぼくもおなじきもちです
きりがないからこのへんでやめます
はい
(夕方迎えに見えた、お母さんの前で)
いつもありがとう
かあさんさびしいにゅういんしたら
からだにきをつけてください
がかになりたかったけどさいきんきもちがくるしくて
がかにどうしてもなれそうもありません
きいてほしかった
さかのぼってかんがえるとあいしてくれたことにかんしゃできますが
もうおとなだからきてもらわなくてもだいじょうぶです
きてほしくないわけではありません
パソコンをやっている最中、今まで見たことのないような、解放された笑顔をすることが印象的だった。彼は、文章も読みこなすのだけど、なかなか気持ちを表現することはできず、まさか、この方法で一気にこれだけの表現をするとは思わなかった。「あいというのはふしぎなことばちいさなこころをおおきくして」のところは、さっそく、コース活動で作っていた歌の歌詞の一部として、くわえた。
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2009年2月4日 01時59分
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