盲重複の問い直し
盲重複と呼ばれる男性○○さんは、学校教育を終えたあとになって、点字を読めるようになった。その学習の順序も、大きなリベットで順番に点の位置を学習していくオーソドックスな順序ではなく、指先で6点全体がさわれるような小さい展示型のリベットをさわることを通してである。長い学習を経てからではあるが、突然理解できるようになったように見え、みんなに驚嘆まじりの讃辞を得た。そして、大きいリベットの点字で、意志を伝える単語も伝えられるようになった。私は、日頃関わっているわけではないのだが、時々、お会いすると、どうしても関わりたくなって、いろいろ手を出してきたのだが、「おかあさんについてどう思っていますか」と訪ねて、「やさしい」とリベットの点字で書いたことがある。
そんな彼に、手を振る方法を試みた。単語を口走る以外には明確な意思伝達の手段を持たない彼だが、この方法を試みると、非常になめらかに気持ちを表現してきた。記録をとらなかったから、正確な文章は残っていないのだが、この方法に驚きを示し、どうして読み取れるのかと聞いてきたりした。
そんな彼に、点字を覚えたことについて尋ねてみると、気持ちを伝えたいから点字をがんばって覚えたというふうに答えが返ってきた。そして、点字を覚えたら気持ちを伝えられるようになるのですかと、切実な気持ちをこめながら尋ねてきた。
彼は、悪い表現だが「自閉的」と称されるような感じの方で、気持ちをうまく伝えることができず、いつも首を振りながら独特の世界にはいりこんでいるように見える。しかし、こうした会話を経ると、彼が全く普通の感覚を持っていて、話せないで苦労してきただけの人に見えてきて、点字を懸命に覚えようとしてきたことがすんなりと理解できた。
盲重複と言われる人たちの理解をどうやら決定的に改める必要が出てきそうだ。
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2009年4月8日 01時22分
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