ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2009年05月19日(火)
人間開発学部の聴講生その2
 病と障害の心理という講義で、ハンセン病元患者の詩人、桜井哲夫さんを取り上げた「津軽、光の中へ」というドキュメンタリーを学生たちと見た。今回は、O君が、「聴講生」として参加していた。私が、桜井哲夫さんを知ったのは、『盲目の王将物語』という小節で、とりわけ、その中の「久遠の花」というのに心を惹かれていた。NHKで彼のことが紹介されるということがわかり、このドキュメンタリーを心ときめかせながら見たことを覚えている。そして、そのハンセン病による過酷なまでの人生を、すべて受け止めて、静謐な心で生きる姿に、深い感銘を覚えた。それから、毎年、このドキュメンタリーをこの講義では取り上げ続けてきた。そして、今年、O君とともに、このドキュメンタリーを見ることができるということが、また、新しい何かを私にもたらしてくれそうだった。そして、O君には、こうした生き方があるということをぜひ、知ってもらいたかった。
 そして、映し終えて、彼にパソコンで感想を求めた。

いいばんぐみでしたゆうきがでてきました
みていてうらやましかったです
ぶんしょうをみているとみえていないとはおもえませんでした
にんげんのすばらしさをかんじました
いいひかりがさしてきました
ちいさいときからにんげんとしてみとめられたいとおもってきたので
みとめられるということのいみがよくわかります
にんげんとしていきていきたいとおもうので
にんげんとしてみとめられることのいみがよくわかります
びょうきはちがうけどゆうきがでてきました

 O君は、学生たちと意見を交換することを求めていたが、その時間はもう残されていなかった。だが、確実に学生たちは、桜井さんからのメッセージに、O君の感想を重ね合わせて、そこから、深い意味を感じ取ったにちがいない。
 講義の後、O君と同世代の学生たちが研究室に集まった。若者らしい会話がはずむ。その中で、「単位」のことが話題になったとき、O君は、文字盤でこう綴った。

 単位、とてもうらやましい。僕には、それは願っても得られないものだから。

 不意に、重い現実があらわになる。
 そして、帰り際、私に手で、こう語った。

普段から、こんなふうに話したい

 新しい学部が、この彼のつつましい願いに少しでも応えられたらと思う。

2009年5月19日 09時22分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
| 自主G多摩1 / 大学 |
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