ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2009年05月24日(日)
にれのはなとみどりのかぜ そして手紙
 高等部3年になった☆☆さんは、こんな願いから始まった。

きいてほしいことがあります
にねんせいのときにじぶんのことばでいいたいことをいってもしんじてもらえませんでした
いいたいことがきいてもらえないのでざんねんでした
きいてほしいことはわたしたちにもみんなきもちがあるということです
ねがいはいいたいことをきいてもらえるようになることです
にんげんなのでのぞみもゆめもあります
じぶんのきもちをきいてほしいです
いいたいことがちゃんとつたえられたらうれしいです
がんばりたいとおもいますがなかなかむずかしいです

 昨年、仲間たちにも言葉があると思うから、学校に来てほしいと訴えた彼女の思いは、もちろん変わることはない。残念ながら、彼女の思いには応えられないまま、彼女の学校生活最後の1年が始まった。
 ここで、話は違う方向へ舵をきる。

しをきいてください

ちいさいにれのきに ちいさいはながさき
ひとりぼっちのわたしにもはるがきた
にれのはなはじぶんのようにうごいたりはなしたりすることもないけど
みどりのかぜにふかれながら
だまったまま らくえんのようなわかいりそうにあふれている
にれのはなも わたしも りそうはひとつ
よいかおりをはなつこと
にれもわたしもきぼうにみちて
ゆめをかなえようと みどりのかぜにいのりをささげる
ちいさいはなと ちいさいわたし 
みどりのかぜにふかれながら
みどりのかぜとひとつになる

 新緑の季節にふさわしい、にれの花と緑の風の詩だ。ここで、お母さんから、にれの花をどうやって知ったのかという質問が投げかけられた。

にれのきはじぶんでそうぞうしたきです なにかのうたできいたけどみたことはありません
なまえがきにいりました ざんねんながらみたことはありません
ふしぎなはなです いいかおりがしていいきもちにさせてくれます

 そして、この間、友だちから手紙をもらったけれど、返事を書きますかと再びお母さんからの問いかけ。すると…、

かきます
ついこのまえおわかれしたばかりだとおもっていましたが もうはんとしもたってしまいましたね
びっくりしました いいりかいしゃがいてじのべんきょうができるようになったとは
にねんせいのときはきいてもらうこともむずかしかったけど 
よかったですね きいてくれるひとがあらわれて
みんなおなじねがいをもっていきていますが なかなかねがいをかなえられずにいます
ゆめみたいですが ちいさいときからにんげんらしくわたしたちはいきようとしてきましたが
ふしぎとそうならずにいかされてきました
これからはきいてもらえることをいきがいにしてがんばりましょう。

 この手紙が書かれていくのをお母さんは真剣に見つめておられた。お母さんに内容を確かめると、どうやら、手紙をくれたのは、普段学校でケアルームで食事を取る際に顔を合わせている友だちだから、手紙はその友だちが相手だとちょっと食い違うないようだとのこと。そこで、車いすから降りた☆☆さんに、手で尋ねてみた。
 するとこれは、想像して書いたものだという。手紙を書こうと思った時に、浮かんだ想像の世界をそのまま言葉にしたものらしい。そのことを受けてもう一度読み返してみると、そこには、切ないばかりの願望がこめられていることがわかった。
 「きいてもらえることをいきがいにして」がんばれるような時代が、早く来ることを、いや、早く作り出していかなければならない。

2009年5月24日 00時25分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
| 自主G埼玉2 |
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