ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2009年06月03日(水)
ふつうのべんきょうがしたかったけど…
 自分で歩くこともでき、また、かなり自由に手の操作もできる◇◇君に対して、最初は、タッチパネルを一緒にさわる方法で関わっていたが、前回からこちらがスイッチをどんどんON-OFFして、選択の小さな力を読みとる方法を試してみて、うまく長文が綴れるようになった。

ちいさいときからゆめでした
みんなとはなしがしたいです
びっくりしました
はやくてみてなくてもできるのでらくです
びっくりしました
りかいしてもらえてうれしいです

 見ることも、手を使うこともできる◇◇君だが、聞くだけでできるこの方法が楽だということだった。そして、見て文字を指さす方法では、文字の理解が今一つあやふやなように見えてしまうのだが、この方法ならば、こうしてすらすらと長い文章を書くことができる。なお、彼は、明確な発声はできないが、はいといいえは明確であり、自分の思い通りの文字が選べないと、本当に残念そうな声を出すので、ある意味では非常にわかりやすい少年だ。そして、次のような言葉を綴った。

みらいがひらけてきました
みらいがあかるくはじまりそうです
みらいがねがいどおりになりそうです
みらいがたのしみです
みらいがゆめのようにひろがってきました

 「みらいが」と繰り返される言葉のリズムが、◇◇君の独自のリズムであるように感じた。
 ここで、ひらがなの理解について尋ねてみた。

ひらがなはぜんぶおぼえましたがかくのはたいへんです
さがすのはかんたんです
ゆびさすのはたいへんです
ちいさいころからみんなとはなしたかった

 さらに、お母さんについて尋ねてみた。すると、さらさらと、お母さんに対する、素直な思いやりを表現した。
 
おかあさんいつもありがとうございます
ぼくのことでいつもいそがしくてごめんなさい
じぶんのじかんをだいじにしてください
にちようびはあそびにでかけてください
にちようびはおとうさんがいるのでだいじょうぶです
ぼくひとりでるすばんをします

 そして、何度も繰り返される次の言葉が再び登場する。

ちいさいときからいいたいことがいいたかった
みんなとはなしたい。

 ここで、詩を作ったことがあるかと尋ねると、力強くうなづいて、次の詩が書かれた。
 
ゆめがかなって ひかりがさした
ゆめがかなって やっとゆうきがわいてきた
ゆめがかなって りそうのかぜがふいてきた
ゆめがかなって ねがいのはながひらいた
ゆめがかなって ろうそくのひがともった
ゆめがかなって りそうのもんがひらいた
ゆめがかなって みちがひらけてきた
ゆめがかなって ゆきのようなかぜがふいてきた
ゆめがかなって ひとりぼっちではなくなった
ちいさいぼくは ゆめだけをだいじに
りそうをもとめて いきてきた
みらいのゆうきが ひつようだ
みらいのものがたりが よろこびだ
みらいのみのりが ひつようだ
みらいのびとくが ひつようだ
みらいのみちが ひつようだ
みらいのぼくには わずかなわずかなゆめが
こころのなかからわいてくる
みらいがあかるく ひろがって
りそうのかぜが ふいてきた。

ゆき いのり
ゆき ねがい
ゆき へいわに
ゆき よいいのち
ゆき きぼうを
ゆき ゆめを
ゆき りそうを
ゆき みらいを
ゆき ちいさなぼくに
ゆき ねがいをかなえ
ゆき よいじんせいを
ゆき べんりなせかいを
ゆき わかちあう。

 独特の反復によって広がっていく◇◇君の詩の世界は、本当に個性的だ。
 また、算数についても自分でわかる問題を作って解いてみてとお願いした。

296+54=350
かんがえたからわかる
だれもおしえてくれないのでじぶんでおぼえた
42÷6=7
くくもひとりでてれびでおぼえた
665÷5=133
222÷2=111!
555÷5=111!

 そして、665÷5は、一度まちがえてしまったが、あとは、正解。横にいるお母さんは、ただただ驚いていらっしゃる。
 そして、遊びのように英語を書いたあと、分数を教えてほしいと言われた。

BOOK ほん
ぶす(=分数)をりかいしたい
おしえてください

 ちょうど、その場にあったホワイトボードを使って急遽、分数の基本的な「授業」をした。そして、感想は次の通り。

ぶんすうのいみがわかりました
うれしいです
みらいがひらけてきました
ふつうのべんきようがしたかったけどおしえてもらえなくてかなしい
がんばってりかいしたいとおもいます
びっくりしました
りかいできてうれしいです
ちいさいころからのゆめでした

 最後に、タッチパネルに換えて、50音表を手を添えることで、指さして、次のような文章を書いて、この日の関わりを終えた。

しあわせ だいじにされて
じぶんでやれたらうれしい
かあさんいつもありがとう
あたたかいはな いっぱいあげたい
はな あげたい

2009年6月3日 11時50分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
| 自主G多摩3 |
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