ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

»くわしく見る
2009年06月19日(金)
大学の授業で
 大学の授業で、今年3月に学校を卒業した男性方が、同い年の学生に話をしてくれた。この授業では、学生と同世代のゲストは3人目になる。一部の学生は、慣れもあってなかなか私語をやめない。注意をすると雰囲気も悪くなるし、いくらなんでもやむだろうと考えて、特別の注意もせず、話を始めていただいた。

 わたしのなまえ○○○▽▽▽▽といいます。
名前はいいですが、不自由な体で見たとおりの体です。自由に言いたいことが言えないので、自分の気持ちを伝えることがむずかしいです。
聞いてほしいことがあります。自分たちは、見た目で判断されるので人間として認められないことがあります。びっくりされるかもしれませんが、小さいときからぼくらは人間扱いされてきませんでした。

(一部の学生が私語をやめなかったことに対して)
 なぜ話を聞いてもらえないのでしょうか。残念です。小さい時からなかなか自分の気持ちを聞いてもらえなかったので慣れていますが、ない機会なので、大事にしたいと思います。
 自分にとってびっくりすることは、分相応の生き方をしていても、禁止されることが多いことです。ぎちぎちの決まりやずっとぞんざいに扱われてきたことで、なかなか人を信じられなくなっています。自分にとって小さい頃のみなさとの記憶が早くなくなればもPっと素直になれると思います。小さい頃のいい思い出がなかなかありません。小さい頃からみんなからばかにされたり人間扱いされなかったので、人間として聞いてほしいです。人間らしく生きようとしてもなかなかまわりは理解してくれません。人間として扱ってほしいです。小さい頃からのどうしても果たすべき夢でした。
 みなさんはなぜ学校で勉強しているのですか。びっくりするかもしれませんがぼくは学校で何も教えてもらえていません。小さいときからずっとそうでした。小さいとき―眠っている人がいるのがいらいらして話せません―から話せなくてみんなから無視されてきたことがつらかったです。みんなも勇気を出して言いたいことを言ってください。小さいときからの疑問でしたから聞きたいです。
びっくりしているのですか。なぜ何も言ってくれないのですか。

(学生:学校ではどんなことをやっているのですか?)
歌とか感触遊びとかずっとやってきました。みんなが幼稚園の時にやっていたものです。
(学生:今まででいちば楽しかったことは何ですか?)
 自分の気持ちが言えたことです。願いでしたから、気持ちを聞いてもらえるとは思いませんでした。びっくりしました。そんなことができるとは思いませんでしたからうれしかったです。人間として認められたような気持ちがしました。自力で話せるようになりたいです。小さい頃からの夢でしたが、なかなか信じてもらえません。学校の先生は、信じてくれませんでしたから。きびしいです、生きるということは。学校には行きたかったです。普通の勉強がしたかったです。分相応の生き方でも、ぎちぎちなのはいやです。みんなと同じ勉強がしたかったです。(学生:将来の夢はなんですか?)
将来の夢は夢に過ぎませんが、一人で生きていくことです。唯一のゆめです。だけどむずかしそうです。ぎちぎちの世の中ですから。
今日はいい機会を与えていただいてありがとうございました。自分の気持ちを人前で話したのは初めてです。自分の気持ちを聞いてもらえてありがたかったです。なかなかうまく話せなくてすみませんでしたが、よい時間をありがとうございました。


 けっして学生にはただ耳障りのよい話とは言えなかった。私語や居眠りをきっちり指摘する強さは頼もし限りだったが、生まれて初めて人前で語る自分のことを、本当に受け止めてもらえるのかと不安に思わざるをえないこれまでの日々を思うと胸がいたんだ。 
 途中私も、対等ということを学生に語った。
 これまでの歴史は、目の前の学生たちとあまりにも違うが、○○○さんを受け入れる同世代の対等な存在が、彼に自信を与えてくれたにちがいない。
 研究室にもどり、リラックスした雰囲気の中で、彼には詩を書いてもらった。次の通りである。

いい風が吹いてきて
においのいい風とぼくのハーモニーが
どこからともなく聞こえてきた
人間として初めて認められた
願いを携えて分相応の道を生きていこう
小さな頃の緑と白の交差する道を
南に向かって歩いていこう
別々に夢を見てきた私たちが
ここで一つになり
別々のよい小さな願いを分かちあいながら
じっとあしたを待ち続けよう
別々の時間が一つになり
別々の夢が一つになるとき
人間として生まれたことを誇りに思いながら
未来に向かって道を切り開いていこう
人間として生きながらえるだけではなく
一人の人間として生きていきたい
ぬいぐるみのような生き方に沈黙させられるのではなく
人間として誇りをもって生きていきたい
願いはびりになってもいいから普通の学校に行きかった自分もいて
夢いっぱい見ながら 今日まで生きてきた
自分の夢だけではなく 仲間たちの夢をともに理解しながら
人間としての道を切り開いてきた
夢は広がって 夢としてずっと小さな光を放ち続けているけど
小さい頃の夢は自分一人ぼっちの夢ではなく
分相応ではあっても仲間とともに見る夢だ
別々の夢が一つになって小さな光を放った
別々の夢が一つになって見知らぬ世界を開いてくれた
小さい人間でも願いは同じ 誇りを持って生きること
小さい人間でも願いは心の中で よい光を放っている
 小さい光かも知れないが 光は永遠の光として心の中でかがやき続けている
自分と仲間のために きっといつまでも


2009年6月19日 01時53分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
| 大学 |
トラックバックURL:http://blog.zaq.ne.jp/yshibata1958/trackback/242/
コメントを記入  
お名前(必須)
 
パスワード:
 
メール:
 
URL:
 
非公開:  クッキーに保存: 
※非公開にチェックを入れると、管理者のみにコメントが届きます。
ブログの画面には表示されません。
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー リンク