ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2009年08月16日(日)
未来を語るグループと その2 人生は闘いだ
 二人目は、32歳の男性だ。筆談によって少しずつ言葉を発し始めた彼に、2スイッチワープロでやりとりをした。

小さいころから話したかった。入院しているおとうさんが心配です。勇気が出てきました。びっくりしました。なぜわかるのですか。不思議です。力を入れていないのにどうして伝わるのですか。字を考えていて、ここだと思っています。びっくりです。人間として認められたような気になります。小さい時からの夢でした。小さい時からたくさん詩を作ってきましたので聞いてください。

果敢に挑み 人生を生きる
人生は闘いだから負けていいはずがない
敏感な自分の心を研ぎ澄まし
敏感に耳をすませて
人間としての未来をかちとろう
未来はきっと敏感な住んだまなざしに
凛とした姿を現すだろう
小さい時から場には入れてもらえず
いつも一人ぼっちだったから未来は夢だった
敏感な心が夢を持ち
敏感な心が願いをかなえ
未来が明るく広がった。


 年齢の重みを感じさせる詩だった。闘いとしての人生に果敢に挑むという言葉が、これまでの日々を物語るようだった。詩の最後の方が、今まさに言葉を綴れることの喜びを語っているような気がしたので、この場で作った部分もありますかと尋ねると、そのことに答えながら、次のように語ってくださった。

はい。前から作っていた詩につけくわえました。詩を作っていると気持ちが落ち着きます。願いでした、自分の詩を聞いてもらうことが。

 さらに、もう一篇綴られた。
 
静かに望みの花が咲く
人間として生まれて生きてきて
願いをたくさん持ってきて
勇気をたくさん敏感に育て
分相応に生きてきた
みんなに人間としての誇りを伝えきれず
静かに一人生きてきた
夢は祈りに変えて
一人で静かに生きてきた
勇気を持って楽園を目指し旅立とう。


 そして、次のような感想が書かれる。

未来が開けてきました。びっくりしました、夢を見ているようです。人間として認められた気分です。小さい時からの願いでした。理解してくれてありがとうございます。詩を作っていることがどうしてわかったのですか。はい。わかりました。

 ここで、さらに歌を作っていないかを尋ねると、あるとおっしゃる。そして歌詞が書かれた。

人生にみんな夢をもとう
一人で夢を育ててゆけば
未来はきっと開けてくるさ
一人で夢を勇気に変えて
勇気をもって夢をそらいっぱいにひろげよう。


 そして、手を振りながら「ドレミファソラシド」と尋ねながら、メロディを聴き取った。そして、それを受けて次の言葉が書かれる。
 
信じられません。未来が開けてきました。夢みたいです。理想的な方法ですね。理解してもらえてうれしいです。未来が開けてきました。理想のやり方です。見たこともないやり方で驚きました。夢みたいです。
 
 ここで、闘病中のお父さんへ手紙を書いた。

とうさんこれまでぼくを育てていただいてありがとうございます。勇気を出して病気と闘ってください。敏感な心で勇気を出してください。わたしたちをやさしく見守ってくれるからおとうさんが大好きです。理解してくれる人が現れましたからぼくはもうだいじょうぶです。理想的なやり方です。わたしたちはみんな言葉を持っているということをわかってもらえてしあわせです。勇気が湧いてきました。わたしたちのことを未来に向けて飛び立たせたいと思います。

 ずっっしりと重い出会いだった。




2009年8月16日 01時18分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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