ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2009年08月16日(日)
実のなる花はまだ咲かぬ
 施設で暮らす○○さんのお宅を訪問した。小1からおつきあいしていながら、34歳になって初めて文字を綴ることのできた方だが、最初の時の、喜びのトーンは見られなくなり、せっかく言葉がわかることが明らかになったのに容易に進まない理解と、相変わらず放置されている仲間たちのことが、言葉を重くする。

 聞いてほしいことがあります。なぜ自分たちの気持ちは聞いてもらえないのでしょうか場場を考えてもぼくたちの気持ちはもっと尊重してもらえたらうれしいです。理解してほしいです。勇気を出していいたいと思うのですが敏感に感じてくれる人が増えたらいいとおもいますがなかなかむずかしいようです。夢をかなえることができたらうれしいです。未来はわかってもらうことができたらいいなと思いますがまだまだむずかしいのでしょうか。人間としてやっと認められたので勇気を出して住んでいる場所を変えていきたいと思います。来年いっぱいぐらいには来てもらえますか。人間らしい生活がしたいです。ぼくだけではなく仲間のことが心配です。人間として夢を大切に生きていきたいと思います。人間としての気持ちを大切にしたいです。いい未来がほしいです。理解してもらいたいです。

 一歩一歩前進はしていることを言い訳のように伝えて、最近、多くの方々から歌を聴き取っていることを伝えたところ、次の詩とメロディーを教えてくれた。

願いの実がなる花が咲く
昔の夢を紡いできたが
実のなる花はまだ咲かぬ
実のなる花を夢に見て
ぼくは理想の時を待つ。




 「まだ咲かぬ」という言葉や、語りそのものの寂しげなメロディーが胸にささる。そして、さらに文章は続いた。

 曲を理解してもらえるとは思いませんでした。びっくりしました。敏感さに驚きました。あっています。自分で口ずさむのとは感じがちがいました。いい気持ちです。小さいときから曲を作っていましたがまさか聞いてもらえるとは思いませんでした。
(歌は)大好きでした。おかあさんがよく歌ってくれました。きりがないくらいたくさん歌ってくれました。いいおかあさんです。
(施設になかなか来れないのは)忙しいからしかたありません。いつも小さい孫の世話でたいへんです。がまんしていますが心配しています。元気かどうか。自分はだいじょうぶですから。体にに気をつけてください。(面会の時の)散歩は無理をしないでください。ぼくが体重が重いからです。(体をつっぱらせるので重く感じることについて)力がはいるのはしかたありません。(勝手に力が入ってしまうんですよね。)そうです。勝手に力がはいってしまいます。(力がぬける薬でもあればいいけど)薬はこわいです。ぼくたちは眠らされてしまいますから。薬についてもぼくたちの意見を聞いてほしいです。小さいときからの願いでした。
だいじょうぶです。また来てください


 暖かい家族にかこまれて育てられた○○さんの思いは、いつも暖かい。ご両親のことをしきりに気遣う心のあり方は、すでに自立をとげているのみならず、人間としての成熟がある。

2009年8月16日 08時05分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
| 家庭訪問 |
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