10月18日の青年学級
10月18日の青年学級、たくさんの人がまた、手をふる方法で語った。今回はとうとうパソコンをワープロのために開くことはなかった。左手で手を振りながら右手で言葉をノートに書き付けていく。このスタイルで、短い時間の合間をぬっていろいろな人と会話した。その中で、ここでは、会話としてではなく、詩や歌などの表現として語られたものだけをとりあえずピックアップする。
最初は、自閉症と呼ばれる女性のFさんの詩。
望みはこのやり方で気持ちが言えるようになりたいです。このやり方で望みが言いたいです。見たこともないわかそよのような世界がひろがってきました。よいやり方ですね。夢みたいです。聞いてください。
緑の風に乗って 雲を越えて 南の国へ行き 南の風に吹かれて
昔の苦難を捨て去って 苦労してきた欲望の心を もっと素直な私に変えて
私らしく生きていきたい
昔から考えています。昔から空を見ながら作っています。よい詩ですか。よい詩だったらうれしい。
よい森の中に行きたい
よい森の中でよい花を探しに
よい森の中をもっと自由に歩きたい
よい森の中を苦しみから解放されて歩きたい
見たこともない緑の風に乗って
南の国に行き 森の中を歩きたい
見たこともない緑の風に乗って
昔のことを忘れたい
見たこともない緑の風に乗って
もう一度夢をとりもどしたい
見たこともない緑の風に乗って
勇気を持って生きていきたい
見たこともない緑の風に乗ってもう一度夢を取り戻したい。
そして、次は、外耳に関わる手術の後遺症で聴覚に障害があるとされるNさんの詩だ。彼は、一応、音が聞こえるというし、聞こえていなければ私の方法で言葉が綴れることはありえないことだ。
望みの歌を聞いてください。
望みをよい願いに変えて
きれいな若者を よい人間にしよう
美しい緑の願いの木に
見たこともない花が咲いて
見たこともない緑の木が夢のように
緑にろころこのむろろんと歌を歌う
緑の木をみんなで歌おう
緑の木をみんなで歌おう
願いの木が願いをかなえて
みんなをりこうなみんなに変える
美しい木をみんなでいろいろな花で飾ろう
みんなで飾ろう
重度の肢体不自由の女性、Kさんは、帰りの集いの短い時間の中で、次の詩を書いた。
願いのくるまいす
勇気を出して言ってみよう
不思議な緑の風に乗って
歌をいっぱい歌いながら
いいきれいな歌を歌いながら
美しい歌を言い声で歌えば
私の気持ちを昔の陰気な心から解き放ってくれるだろう
夢を見ているような気持ちで
お母さんに勇気を出して言ってみよう
うるさい車をけちらして
うるさい車を追い越して
夢をかなえるために
緑の風に乗せて
前に進めて行こう
お願いだから美しいくるまいすよ
私の願いを聞いてほしい
美しいくるまいすよ
私の未来を古い心から解き放ち
未来に向かって生きるために
昔の陰気な私を変えてくれ
みんなにも聞いてもらいたい。
Hさんは、帰りにみんなで集うトマトハウスで次のような文章と詩を書いた。亡くなった愛犬コロのことだった。
苦しいことがありました。よく知らない職員が私のことを笑いました。許せないと思います。許せないのは、コロのことを笑ったからです。職員を許せないです。この前です。許せません。
コロのこと
コロが死んで世話をすることができなくなってしまって、ろうそくの火が消えたようになりましたけど、ぼくは、きっとコロが天国でコロのままで元気でいると思います。いい国でいい食べ物を食べて、美しい花に囲まれていると思います。うらやましいのは、コロのような犬を連れた人に会う時です。夕焼け時に、もっときれいな心を持っていればコロはいなくならなかったのではないかと思います。運命かも知れませんが、よく生きてくれたと思います。
自閉症と言われるHさんも、同じくトマトハウスで次のような美しい心の人の歌ということで、文章と詩を聞かせてくれた。
よく聞いてくれてうれしいです。みんな話せてよかったと思います。よい苦しい時の実りをみんなが言葉で伝えてくるのがすばらしいと思います。うれしいです。勇気が出てきます。うれしいです。願いがかなってうれしいです。美しい心の人に会いたいです。美しい心の人の歌を作りましたので聞いてください。
心のきれいな人はよい願いを持ち
ろうそくの光のように暗闇をランプのように照らし
もっとつらいことがある人にろうそくの火を照らして
この苦しみから解放されるようにと励ましてくれます。
美しい心の人は、いつも苦しいことがわかるので、いつも悲しんでいます。
勇気を出していい心を持ちましょう。
よい心を持てば、るり色の心を願いのままに
空高く飛翔させることができます。
るり色の心はいつも光っています。
勇気がいることかもしれませんが、
勇気を出して生きていきたいです。
美しい心の人を私は大切にしていきたいです。
るり色の心を大切にしていきたいです。
勇気がりりしい心を作り出していきます。
うれしいです。気持ちがすらすら言えて。うれしいです。うれしいです。
独特の世界観をもっているSさんの詩も聞かせてもらえた。
私の気持ちを聞いてください。
夢の暗闇を歩いていけば
夢の暗闇を照らす光に出会う
夢の暗闇を苦しい気持ちで歩いてゆけば
苦しみを解き放つ歌が聞こえてくる
ミロのビーナスのようなきれいな人がふいに現れて
無理のない苦しさをやさしく私から解き放ち
美しい心の声を私にかけていった
美しい心の声は美しい気持ちの表れで
未来のゆるしを私に伝えてくる
未来のゆるしはいつのまにか私を包み
夢の暗闇を救い出して
私に空のような若々しさを理想的な未来とともにくれた
これまで、コミュニケーションが大変むずかしかた人だけでなく、話しにくそうにしているだけに見えるような方までが、手をふる方法で気持ちを長く語るようになった。話し合いの様相は、まるで一変してしまったといってよい。
最後に行った居酒屋でもまた、今までは、静かにグラスを傾けるだけだった人が雄弁に語った。
まだ、これらのことは、どこの世界でも受け入れられてはいないが、私たちにとってはめくるめくような世界だ。
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2009年10月21日 20時13分
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