お父さんの遺影の前で
3才の頃から関わってきて、ここ数年、たまにしかお会いしていなかった○○さんのお宅を久しぶりに訪問した。お父さんが昨年秋に亡くなられたことを知り、いつもやさしかったお父さんにお線香をあげさせていただくためだった。
そして、1年半ぶりに会った○○さんに、2スイッチワープロを試みた。なかなか手でスイッチを触ることがむずかしい○○さんだが今回は、肩や肘で挑戦した。すると、これまでのことが嘘のように、彼は、すらすらと文字を綴っていった。
きいてほしい きもち。
かあさんいつもありがとう。きもちいい。ちいさいときからはなしたかったからうれしい。きもちがいいたかったけどいえなかった。
(ひらがなはいつ覚えたのですか。)
ちいさいときにおぼえました。
なぜわかっていることがわかったの。たいへんうれしい。ねがいでした。
(簡単ですか。)
かんたんです。かんたんですがふしぎです。なぜちからをいれていないのにわかるのですか。
きいてください、ぼくたちのきもち。ぶんそうおうのいきかたはいやです。ちいさいころからなにもわからないといわれてきてかなしかったです。みらくるのようです。しんじられません。じぶんのことばだからほんとうですが。のぞみがかないました。まるでぼくのこころをよんでいるみたいです。
(手で握るスイッチはどうですか。)
てがかゆくなりますからこのすいっちがいいです。そんなやりかたをどうやってはっけんしたのですか。
てはかってにうごきます。はいそうです、ゆめみたいです。らくにはなせてうれしい。ふしぎです。だれもわかっているといってくれないのにどうしてわかったのですか。みかけによってごかいされてかなしいです。はい。ですがそれをわかってくれたひとはいませんでしたからうれしいです。
(最初に何か言おうとしてましたね。)
ひさしぶりといいました。ゆめのようです。
(おとうさんの話をしている時はどんなことを考えていましたか。)
ぼくもいっしょうけんめいがんばったといいたかったです。おとうさんがなくなってとてもさびしいです。そうぎにはでられなかったけれどひとりでもんもんとしていました。かあさんがとてもかなしんでないているのがかわいそうでした。とうさんのことをまいにちおもいだしています。ぼくはかあさんにめいわくばかりかけているのでもうしわけないです。らくなせいかつをさせてあげたいです。ねがいはそんけいするおとうさんにりっぱなすがたをみせることです。わかってもらえてうれしいです。りっぱなすがたとはじりつすることです。ねがいでした。なんねんかかってもいいからじりつしたいです。
いいやりかたですね。うれしいです。ねがいはこのほうほうではなせるようになりたいです。くろうしたてきたのでみとめられてうれしいです。じんせいをちからいっぱいいきたいです。かあさんにもよんでほしいです。ちいさいときからゆめでした。どうしてわかっていることがわかったの。ことばをりかいしていることがわかってもらえたらそれでじゅうぶんですりかいしてもらえてうれしいです。
おじいちゃんのことはにがてでしたがとてもだいすきでした。ねながらよくはなしをしてくれましたのでさびしいです。らくをさせてあげたかったです。
わすれていました。ぼくはみんなにとてもかわいがられていました。おとなになってもみんなぼくをだいじにしてくれました。だからとてもかんしゃしています。みんないいひとばかりでしあわせです。
わかってくれてうれしいです。みんなにありがとうといいたいです。
つかれました。しゅうちゅうしたので。
ありがとうございました、きてくれて。いいじかんでした。
家に帰って、この文章を、次の短い手紙をそえて、ファックスで送った。
今日は、○○君の気持ちを何とか、聞くことができて、とても感激しました。長いことおつきあいしていたのですが、こうした方法にたどりつくのに、ずいぶんと時間がかかってしまいました。
前にうかがった時にも、可能性は感じていたのですが、手を使ってスイッチを操作してもらう方法しかなかったので、うまくいきませんでした。この一年ほどの間に、手が敏感でスイッチをさわるのが苦手な人に、肩や肘などにスイッチを軽く押しつけていくやり方で反応が拾えるようになり、○○君ともようやくうまくやることができました。
ひらがなも小さいときに覚えていたということで、今までの関わり合いがとても的外れだったことに、申し訳ない思いがいたします。
やさしかったお父さんにも、こうした○○君の言葉をお届けすることができなかったことが残念です。心からご冥福をお祈りいたします。
また、よろしくお願いします。
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2010年1月12日 15時12分
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