ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2008年06月28日(土)
気持ちを表すこと、そして行動の意味
 言葉で気持ちを表現することを巡って、今日も、たくさんのことを考えさせられた。
 高校生の○○さんは、「じのひょうげんのほうほうをおしえてもらってくのうのひびがよろこびのひびにかわりました」と綴ったあと、「すなおなじぶんになりたいとおもい がんばっていても なかなかみとめてもらえず だれかわかってくれるひとがほしいです」と思うように進まない理解にもどかしさを感じる気持ちを表した。彼女は、半年前の最初の出会いの日、「うれしいきもちです もうだめかとあきらめかけていたけれどきぼうがでてきました なぜわかってくださったのですか」と綴った方だ。そして「りかいがむずかしいのはなぜですかおしえてください」と私は問いを投げかけられた。答えに窮した私は、誤解されやすいからと説明をしたあと、率直に、手の運動やイエスとノーの答え方について、聞いてみた。すると、かりかりと頻繁に動く指の動きは、「かってにうごく」ということで、指をさかんに口にもっていく理由は「うごきをとめたいから」と明確な答えが返ってきた。そして、はいといいえについては、「めでうったえています なかなかうまくいきません」とのこと。「からだがうごかなくてもいろいろかんがえていてかんじています にんげんですから」と付け加えた。彼女のもつハンディの意味はなかなか理解されにくい。それが、いっそう彼女の理解を妨げているようだ。しかし、さらに、「でもわかってもらえてよかったです まだじかんがかかることはわかりました ねがっていればいつかかなうとしんじていきたいとおもいます」と結ばれた。
 中学生の◇◇さんは、「てではなせてとてもかんげきしています ちいさいときからくだされたうんめいをどうしようもないとあきらめていましたが ねがいがかなってとてもくしんしてきたかいがありました」とどきっとするような言葉を綴ったあと、お父さんへの感謝の気持ちを綴り、「ふだんことばにできないのでやっといえました」とつけくわえた。そして、現在の心境として、「だれもわかってくれなかったからかなしかったけどいまはわかってもらえてごきげんです」と素直な思いを表した。
 また、高校生の☆☆さんは、「りかいしていることがなかなかつたわらなくてこまっています」ともどかしさを表したあと、「ほんとうのきもちをわかってほしいほんとうのこころをわかってほしいゆめはきもちをみんなにわかってもらうことです」と綴った。○○さんと重なる思いである。ところで、☆☆さんは、文字を綴っている間に、何度か、パソコンのキーボードに手を伸ばした。残念ながら、彼女の現在の手の動きでは、キーを一つずつ区別して押すことはむずかしい。そして、大変申し訳ないことに、デリケートな機械だということで、その彼女の手を制してしまう。そこで、改めて、パソコンに手を伸ばした理由を尋ねてみた。そこで返ってきた答えは、「てがのびるのはぱそこんをやってみたいからです れんしゅうすればできるとおもっているから ぱそこんかってほしくてたまりません」であった。あまりにも当たり前のこの答えを、しかし、私は予想できなかった。○○さんのように、意図に反した動きではないかと思っていたからである。そこにパソコンがあれば誰だって手を伸ばしたいと思うはず。その当たり前のことさえ、見誤ってしまうほどに、私たちは、彼女たちのことをほんとうは理解できていないのである。
 一つ一つの行動の意味も、また改めて私たちは問い直されているようだ。

2008年6月28日 23時53分 | 記事へ | コメント(2) | トラックバック(0) |
| 自主G多摩3 |
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読んでいて、ふつふつと勇気がわいてくるように感じます。それは言葉がストレートだからでしょうか。目のうろこを取り去るような柔軟な感覚を身に付けなければならないものだと、ことばを読んで強く感じました。(感じた気持ちを素直にストレートに言葉にするのはむずかしいですね、うまく言えない
2008年07月01日(火) 07:38 by 柴田保之
 コメントありがとうございます。なかなか伝わらない思いをかかえた方々の言葉が、一人でも多くの人に届けばと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。
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