盲学校にて
明確な発語もなく、手の操作も力が入りすぎてぎこちなかったYさんが、点字を区別し始めた。八王子盲学校の小学部で起こっている奇跡のようなできごとだ。
私が月一回程度の頻度で、八王子盲学校にうかがうようになって4年目を迎える。この3年あまり、私は、学校ぐるみで大変充実した重複障害のお子さんに対する教育が展開されていく姿をまのあたりにしてきた。
Yさんの学習は、一歩一歩先生方の着実な努力で前に向かって進んでいたが、手の操作には肢体不自由のハンディのためと思われる強い力が入っているために、なかなかスムーズな動きが出にくく、どれだけ本人が納得してるのかを十分に確認できないような場面も少なくなかった。それが、昨年度末の3月、それまでの学習の成果が一気に花開くような場面に出会うことができた。
一つはそれまで入っていた力がうそのように抜け、なめらかな手の動きが生まれてきたこと、そして、かなり抽象度の高い日課表の触覚的なシンボルを、はっきりと触り分けて、先生の求めるシンボルを確実に手渡していたことだった。ちょうど、この年度を1年限りで担任されておられた先生の授業の最後の見学となったので、この日の感動を私は、手紙にして先生に送った。
それから、2ヶ月後、Yさんは、新しい先生と、ついに点字の学習に入っていた。学習する姿もたいへん誇りに満ちた様子で、先生とのやりとりも非常に豊かになっていた。そして休み時間にはかつては必ず太鼓のところでひとり音を楽しんでいたのに、この日は、人との関わりを楽しむようになっていた。
このクラスにはあと二人友だちがいる。その二人もまた、点字の学習に当たり前のように取り組んでいる。ともに、3年前には考えられなかった姿である。このお二人のこともまた、いずれ書くことになるだろう。
教育の可能性の限りなさと子供の可能性のすばらしさをあらためて感じた一日となった。
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2008年5月17日 01時09分
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