ぬいぐるみの望み
ぬいぐるみは、多くの人が語ってきたテーマだ。わかってもらえない気持ち、伝えられない気持をぬいぐるみに託し、すてきな詩や歌も生まれてきた。そして、また、ぬいぐるみを歌ったすてきな詩が生まれた。今年から社会人になった男性が、初めて実際に彼がパソコンで文章を綴るところを見にこられたお父さんを前に、表現したものだ。選ばれた言葉の美しさがひときわ光る詩だった。
ぬいぐるみの望み
少年はいつも祈っていた
ひとりで海に出ることを
人間として生まれたけれど
ぬいぐるみとしての人生をしいられて
ひとり静かに夜の闇を見つめながら生きてきた
私の夢をそよ風が静かに聞いて通り過ぎ
私の瞳を月が静かに照らし消えていく
みんないい願いだと言ってくれたけれど
渡しの夢はかなうことなく過ぎていった
理解する人もいないまま
時は静かに過ぎてゆき
小さな空の隙間から
のどぶえの赤い鳥が降りてきた
見たことのない姿の鳥は
静かに私ののどに止まり
一声高く鳴いたかと思うと
すっと空に消えていった
もんもんとした心が
すっとさわやかな思いに変わり
私は声を出してみた
するときれいな声が出て
体が放り出されたかのように軽くなり
私はぬいぐるみの心から
人間の心に解き放たれ
練習もしたことがないのに舟をこぎ
もんもんとした気持ちに別れを告げて
大きな海原にこぎ出していた
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2010年7月18日 00時06分
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