ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

»くわしく見る
2010年08月28日(土)
初めての帰宅 小児科病棟の訪問
 生まれてからずっと小児科病棟の病室にいる○○君とお会いした。現在小学校4年生。その彼が、初めて一泊だけ家に外泊することができた。人工呼吸器など、様々な医療機器を携えての帰宅だ。しかし、 それは、彼にとって、本当にうれしい外泊だった。
 そして、宿泊を終えて病院に戻ってきたちょうどその日、私は彼のもとを訪れた。
 体中で喜びが表現されていた。

 聞いてほしいことがあります。ぼくは初めて家に帰りました。何度も夢に見たことだったのでものすごくうれしかったです。理想は家で過ごすことですがなかなかむずかしいので時々でいいから帰りたいです。
 もうすぐ涼しくなったらまた帰れるとT先生が言っていたので楽しみです。ぼくの妹を紹介します。のんきな妹で、のんきだから寝てばかりいます。とんでもない妹ですがとてもかわいいです。なぜ満足できるのかわからないけどよく笑います 理想はぼくも家族の輪の中で普通に暮らしたいけどなかなかむずかしいです。私たちは理解者が少ないので理解者を増やしたいのだけど、なぜみんなわかってくれないのだろうか。
 なるべくのんびりとしたいです。楽な生き方も大事だと思うのでぼくも妹のようにのんきに生きたいと思います。小学六年生です。そうでした。ねえさんでした。ねえさんだけど子どもに見えたからついつい妹と言ってしまいました。そうです。(病室に)はいれないので会っていないのでとてもうれしかったです。はい、とても喜んでくれました。みんなで写真を撮りました。みんなでぼくを囲んでとてもしあわせそうでした。もらったプレゼントはろうそくでした。はい。ぼくの詩を読んで買ってくれました。とてもうれしかったです。ろうそくのあかりという詩を作りました。聞いてください。はい、光がとてもきれいでした。

千本のろうそくの明かりはないけれど
ここにはきれいな一本のろうそくがあり
ぼくにすてきな希望をくれる
涙に濡れたぼくのへんてこりんな顔をきれいに照らし
忘れられない未来の輝きをくれた
まだまだ未来はくらい闇の中にあるけれど
ろうそくの明かりがあるかぎり
ぼくは空高く舞い上がれるだろう
冒険をするための野をかける翼もないけれど
ぼくは必ず飛び立てるだろう
勇気さえあれば私の理想はかなうだろう
涙をふいてろうそくの明かりを高く掲げて
未来に向かって飛び立とう


ろうそくの灯りが私を照らす
涙の跡をくっきりと浮かび上がらせながら
どれほど私は待ったことだろう
悩まない眠りよ
私を涙の夜から解き放ち
夢とは違う本当の灯りで照らしてほしい
夜の闇よ
私に涙を流させた夜の暗闇よ
もうおまえには負けない
そよ風よ
ろうそくの明かりを消すことなく
私を遠い願いの国まで運んでほしい
私はいつまでも待ち続ける
このろうそくが輝き続ける限り
理想のろうそくの輝きよ
光り続けよ
夜の闇を照らしておくれ


よい光を放ち
よい温かさを運び
ろうそくは私たちを照らす
ぼくはろうそくの明かりがともり続ける限り
闘いをやめようとは思わない
ろうそくよ
自由の明かりよ
ぼくの行く手を照らしてほしい
私たちはよい翼もなく
ここに忘れ去られた存在として生きている
未来の夢を照らし
そんな私たちの苦しみを照らしてほしい
理想も誇りも深い悲しみの海でなくしてしまったから
遠い世界には行けないけれど
自由を探すぼくの前を明るく照らして




2010年8月28日 00時50分 | 記事へ |
| 小児科病棟 |