ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2010年09月06日(月)
2編の詩「背を向けずに」「遠い世界に」
 中学生の☆☆さんは、女の子だが、自らを少年に託した2編の詩を書いた。日常会話はおおむねこなせている☆☆さんだが、こうした詩を口頭で綴ることはむずかしく、スイッチの援助を必要としている。詩の合間に、そのあたりの事情を次のように説明してくれた。

 何かを言おうとするとなぜか言葉が消えてしまいますどうしてなのか私にはわかりませんがよいやり方に出会えて本当によかったです

 ふだんの会話はできているので、ここでいう「何か」とは、それを越えたものということになるのだと思われる。それにしても、これだけの長い詩を作って暗誦しているということだけでも驚異なのだが、詩の深さにもまた、目を見張らされるばかりだった。


  背を向けずに

ずっとぼくは待っている 
涙をこぼしながら
夏の終わりの太陽が 
ぼくの若い時を刻みながら
西の空に沈んでいく
別に未来が閉ざされているわけではなく
涙が夏を律しながら
利口なぼくのために
静かに流れたのだ
ロードマップも持たないで
ぼくは楽園を目指して旅に出る
忘れられない思い出と
忘れられないぼくの未練がましい理想を別れ
このロードとロードの間の
何もない平原を突き進んでいく
忘れそうな若者の夢を
何とかして携えながら
若者らしさは失わないで
理想を目指しこのロードを進んでゆく
西の空が暗くなる前に
取り戻さなくてはならない
ぼくの生きれるその力を
黙ったままで
ぼくは顔を高く上げ
夕焼けの向こうで待っている
勇気を目指して


  遠い世界に

そよ風が願いを乗せて吹いてくる
若い理想にぼくは燃え
そよ風を静かに感じながら
泥炭の荒野を越えて吹いてきた風に
よい知らせを聞きながら
りんどうの花の香るのを見つめながら
よい知らせなど理想に過ぎないことを知りながら
よい知らせをやはり期待して
身の丈にあった願いにけして満足することなく
野をまるで乗り越えたかのように
野を越えていくためには
ぼくもどこかを目指して旅立たなくてはならない
遠くに見えるのは見知らぬ国の見知らぬ世界
その世界はなぜそこにあり
何のために人があこがれるのかさえわからない
でもきっとそこにばかり気をとられてはいけない
みんなもきっとこの道を手を携えて越えて
いい世界に向かって歩いていこう
小さい頃の夢の世界ではなく
未来の自分の本当の姿を
もやもやした気持ちを吹き飛ばして


2010年9月6日 09時21分 | 記事へ |
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