○○君はすぐに詩を書いた。
体が空に浮き上がり
僕はりんどうの花になる
夢にまで見た忘れられない自由の
逃れられない定めの未来
目的はまだ見つからない理想の彼方
わかってもらえた喜びは
許されない私たちの未知の世界
みんなを遠い世界に誘って
瑠璃色の光の願いで夢を紡ぐ
言葉をもっとよいものに置きかえて
ランプを灯す
ずっとよい願いを持ち続けて
どこの世界でもいいから旅立とう
冒険を続けて夢を育てよう
話をすることができた喜びが、必ずしもストレートに未来につながらないもどかしさも背景に透けて見えるそんな詩だ。
ここで私の読み違いはないかと尋ねてみる。
はい なぜ何度もそれを聞くのですか。
読み違いの問題が少し気になっているからだと答える。
そうですか。間違えたらすぐにわかるので驚いています。それはあるかもしれませんがぼくはだいじょうぶです。
一文字ないし二文字間違えることもあるがそれはすぐにわかるので消しているがそのことを表現したものだ。
ところで私たちのわかり方をもっとみんなに伝えたいです。内容は僕は体がうまく使えないということです。どうしても勝手に体が動いてしまうということです。みんなはそういうことはないのですか。
ここで多くの仲間が同様のことで苦しんでいることを伝えた。
みんなもそうだとは感じていましたがそうだったのですね。そうですね。みんな勝手に体が動いているのですね。
思い通りに動けていることはどんなことなのかを尋ねてみると次のような答えと、それを巡る思いが書かれた。
まったくうまく動きません。なかなかうまくいかなくて困っていました。回るものを見るとわからなくなってしまいます。それでよく誤解されますがみんな一生懸命につきあってくれるので勇気づけられますが本当は手が勝手に出てしまうので困っています。ギターに手が出るのも同じですがギターはいい音が出るので困りません。なかなか思い通りに体が使えないで困っています。理想は自分の意思で体を動かすことですが、僕たちも長い間それを克服できなかったのでもうむずかしいかもしれませんが、こうして話せるようになって、話せるなら体もコントロールできるような気がしてきました。自分のことは自分が一番わかっているので悩んでいます。ごろごろばかりしていて申し訳ないけれど僕も一生懸命なのでよろしくお願いします。
回るものが好きだから私たちは彼にくり消し様々な回るものを見せてあげた。それが、こういう意味を持っていたということに気づかされ、愕然とする。だが、それもまた彼は許容していたのだ。
ここで話題が春に入所した施設のことに移る。
施設でかあさんととうさんのありがたさを実感していますが そろそろ僕も自立できなくてはならない歳なのでちょうどよい機会でした。でもちょくちょく家に帰りたいですので。よくわかってもらえてうれしいです。びっくりしています、慣れないところでもちゃんと僕も生きていけることがわかったから。職員はいい人が多いですが、数が少なくて困ります。
そして最後のしめくくりの言葉へ。
自分たちの未来を切り開きたいので来年もよろしくお願いします。自分たちの未来はなかなか開こうとしても開けないのでよろしくお願いします
彼らの言葉の世界が、切り開かれても、それはまだ夜明けの知らせを告げるものでしかなく、夜はまだ明けない。来年こそはという思いと、もっともっと長い闘いになりそうだという思いとが交錯した。
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