ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2011年01月17日(月)
私たちのことをのけものにしない社会はそんなに遠くない
 年が明けて、ある高校生の女の子とお会いした。年始のあいさつに続いて、やや悲痛な言葉が語られていく。そこで、できるだけ話し合いながら関わり合いを進めていった。

あけましておめでとうございます。
なかなか誰も信じてくれないけれど何もわかっていないと思われるととてもつらいです。誤解ばかりされて困っています。

(その笑顔は返事には使えてないのですか。)
まだ返事には使えていません。
(うまく返事ができないことがあるかもしれないけれど、うまく笑えた時はへんじできてますよね。)
はい。でも私にはむずかしいと思われていてやってくれません。字の勉強はまったくしてくれません。
(でも、いい先生はいるでしょう?)
いい先生はいますがなかなか信じてくれません。
(二人だけの時にこっそり話しかけてくる先生はいませんか?)
います。とてもいい先生です。このあいだ名前を聞いてくれました。名前を聞いてくれた先生は勇気がいることだけどと言ってくれました。どんなことでもいいから話しかけてほしいです。
もう少しじっとしているとぼんやりしていると言われてしまいます。

(いろいろ考えているんだよね?)
はいそうです。私はいろいろと考えていますが何も考えていないと言われてしまいます。
(いい先生にはとにかく話しかけてもらいたいんですよね?)
何でも話しかけてくれます。
(他の人が言ってたけれど、すべての人を受け入れたいのに、こういう状況だと受け入れられなくてそのことがまたつらいでしょう?)
そうですね。理想は平和な人になることですがなかなかうまくいきません。
(でも、あまりわかってくれない先生も、どうしていいかわからず、ほんとうは困っているんですよね。)
そうですねとてもよくわかります。何もわからない人とつきあうのは大変ですから。どうにかしてわかってもらいたいです。(もう少し時間がかかるかもしれないね。)
そうですね

「奈落の底」という詩を作りました。

どこにもあかりが見えないの
目の前はもう夜の闇
奈落の底に落ちこんで
深いぽののも泣いている
りんどうの花はどこにあるの
私は理想を失いかけて
奈落の底で泣いている
でもひとすじのあかりがぼうっと遠くに見えている
なかなかそれは近づかないけれど
私は瑠璃色のあかりを求め
理想をなくさずに生きていく。

ぼうっとみえるあかりが早くはっきりとした明かりになってほしいです。
夢のようです。言いたいことがすらすら言えて。ほんとうに速いですね。

(あなたがその時、何をしているか説明してもらえますか?)
はい。聞いていてここだと思うだけなので本当に楽です。
悩みが少し晴れました。私たちのことをのけものにしない社会はそんなに遠くないという気がしてきます。うれしいです。また話を聞いてください。そろそろ時間ですね。


奈落の底にいる彼女に、遠いけれどぼおっとひとすじのあかりが見えていることが救いだ。
夜明け前は、思いのほか長い。


2011年1月17日 20時49分 | 記事へ |
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