ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2011年08月02日(火)
犠牲になった仲間たちへ
 なぜこの日だったのかはわからないが、○○君は、亡くなった仲間を偲ぶ詩を一編、用意していた。なお、犠牲という言い方は、早くなくなった仲間たちのことをそう呼んだものだ。
 
 聞いてほしいことがあります。犠牲になった仲間たちのことを詩にしました。Nくんのこともはいっています。

みんなまっすぐと生きて
ぼくを友だちとして認めてくれ
空の上から見守って
空高いところから応援の光を送ってくれる
なぜみんなを置いて先に空に行ってしまったの
望みのかなわないままどうしてここから旅立ったの
みんなどうして泣いてばかりいるの
もっと未来の夢を大切に生きていきたかったことだろう
なぜ涙は乾かないの
夢を持ち続けようとあんなに頑張ったのに
理解されないままなぜ逝ってしまったの
理解された喜びも知らなくて
なぜ私たちの前から去っていったの
街の明かりは見えますか
夏の暑さは洋服を通して伝わりますか
もうすぐ私たちを理解してくれる世界がようやくやってきます
その時をぼくは君たちとともに迎えたかった
その時を涙ではなく
笑顔で迎えたかった
夢をかなえるまでもう少し空の上から見守ってほしい。

 私たちのつらい気持ちを詩にしました。聞いてもらえてよかったですがみんな本当にどうして亡くなってしまったの。夜の暗闇がようやく光に満たされようとしているのに。そんなにみんな早く行かなくてもいいのに。夜はもう明けようとしているのに。もっと光が射してくるのに。


 彼は、歩くことはできないが、一人で車いすをこぎ、自分で食べることもでき、いくつかのサインで意思表示ができたりする。しかし、言葉を話すのは困難で、しかも、ここが大変理解されにくいことだが、こだわりが強いように見えたりする行動や、気持ちの高まりとともに物をたたいたりするような行動があり、それは、実は意図に反して起こっているものだと本人自身が説明している。勝手に起こしてしまういくつかの行動は、他人からは意図的な行動と見えるために、その行動を起こしてしまうことから認識の水準を不当に類推されてしまうのである。
 そんな彼がパソコンで気持ちを表現できるようになって、「私たちを理解してくれる世界がようやくやってきます」という実感を持つことができるようになったのだ。だからこそ、先に倒れた仲間の思いがつらくつきささってくるんだろう。不覚にも思わず涙ぐんでしまった私の顔を彼は手でそっとふこうとしてくれた。

2011年8月2日 13時08分 | 記事へ |
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