ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2011年09月30日(金)
長かった時間の流れを越えて結婚する弟へ
 近々結婚する弟さんへのメッセージを聞き取ってほしいと依頼を受けて、9月の初め、○○さんとお約束の場所に向かった。スケジュールの調整の関係で、そのお約束の場とは、○○さんの通所施設で、その日はショートステイの泊まりの日だった。簡単な単語を発することでかろうじて気持ちの一端を伝えることのできる○○さんは、視覚にも障害のある方だが、これまでの長い弟との日々を振り返って、気持ちのこもったメッセージを書いた。

長かった時間の流れを越えて結婚する弟へ

 みんな結婚して小さい家庭を築いてもっともっと幸せになれるよう心から祈っています。ぼくが障害があったおかげで弟には十分にかあさんとふれあえる時間がとれなくて申し訳ありませんでした。人間としての秀でたものは僕にはなかったけれど理想だけは高く持ってきました。だからどうしても弟にはしあわせになってほしかったのでとても喜んでいます。勇気を出してお嫁さんにプロポーズできてよかったですね。もし勇気がなかったなら結婚もできませんでしたね。もっともっと勇気を出さなければならないときが結婚生活ではあると思うので、その時は結婚を申し込んだときのことを思い出してまた勇気をふるってください。
 ぼくの中では弟はいつも心のともしびでした。ぼくにできないことを弟がかわりに成し遂げることをいつも応援していましたので結婚は特にうれしいです。マイペースなぼくだけどこれからもよろしくお願いします。
 お嫁さんになる人に伝えたいことはぼくのことで迷惑がかかることがあるかもしれませんがどうかどうかお許しください。わかっていてもうまく話せないだけでなく何の意味かわからないような言葉しか話せない人間ですがよろしくお願いします。
 きょうは望み通りに話せる時間をいただき感謝しています。わかっていただけたらありがたいです。なかなかぼくたちのことは世間では理解されないけれどこうして話させていただいて感謝いたします。おわり。


 これまで○○さんへ向けられてきた家族の暖かい気持ちに呼応するように、○○さんもまた熱い気持ちを家族に向けている。そのことがふだんはなかなか気づかれにくいけれど、けっして思いやる気持ちは一方通行のものだけではないことを改めて感じさせられた。
 書き終えたあと、晴れやかな顔をして、彼は、少し遅れてしまった夕食に軽やかな足どりで向かっていった。

2011年9月30日 09時01分 | 記事へ |
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