最近、俳句に真剣に取り組み始めた○○君は、また、秀逸な句を用意してきた。結構難解な俳句も少なくなかったので、その場で解説をしてもらった。
長き夜 淡々と煩悩 どこでそぐ
煩悩をどこか理解される場所でそぎ落としたいけれどなかなか見つからないということです。
強き藁 縄となわれて炭を包む
なぜ縄を使うのですか。理想的な包み方なのですか。なぜなのだろうと思っている内に浮かびました。
鍋をなぜ瑠璃色にして血わく ふと。
鍋には頑張ってもきれいな色には鳴らないので瑠璃色に塗ってあげたくなりました。血わくとは血が騒ぐという意味です。謎めいた俳句です。
虹の夢疲れた涙の空に架かる。
疲れた涙の水蒸気だから虹が架かりました。
楽な道 自分の前に道のなき。
わが理想 人間となり輝く日。
障害の俳句です。
見られても誰に恥じるところなし。
理想とはわずかに見えて遠きもの。
人間で敏感に見える道の前。
道は道路で道の前には誰かが立っていて僕らを見つめているということです。僕たちはどうしても人間として認められにくいので敏感な人が必要なのになかなかそういう人が現れないと言うことです。
実の母つらく中あたるは強き愛。
はいだいじょうぶです。フィクションですから。障害がある子どもに厳しくする母親がいるので作りました。
力ほしい なぜ見えないの夜明け星。
夕月のわずかな明かりに櫓をこげり。
湯を沸かすやかんの煙しんしんと。
夏に見し轍(わだち)の消えて 迷い道。
震災のことです。夏まではみんな理想を語っていたけれど秋になると全く語られなくなりました。そのことですが誰か同じことを言っているのですか。
誰が泣く すすり泣く声 乗せし風。
轍が冬見えし時あり 除夜の鐘。
紅白の中ではみんな理想を語っていました。それが良かったです。長渕剛の歌がよかったです。地震をきっかけに昔の長渕に戻った気がしたということをお母さんが言っていました。長渕剛のことを先生が知っているとは思いませんでした。長渕剛だけではなくみんないい歌を真剣に歌っていました。よい元日が迎えられました。なぜ先生はわかるのか不思議ですがたくさんの仲間の言葉を聞いているからなのですね。よくわかりましたが夏の轍は残念でした。できるならそのまま小さくてもいいから消えないでほしかったです。夏の轍という言葉はとても気に入っている言葉です。(轍の数は)二本です。車いすの轍のイメージです。そうですか、轍という言葉を使っている人がいるのですか。それを教えてください。
罪の泣き嬰児の泣き力湧く。
なかなか泣き止まない子どもを見て作りました。はい泣く子は育つということをばらばらにして作り直したものです。
どこまでも何艘の船続く海。
小さい目なぜ光るのか理想知り。
夏の轍未来に続け 戻らずに。
夏の轍日本を強く導けと。
敏感な動物のごとく無我の我。
夏までの日本の特別な空気、それは、○○君にとって、日本が理想に向かってひたむきに進んでいるように見え、そこには、まっすぐ理想に向かう日本の足跡としての轍が見えていた。それを彼は夏の轍と名付けた。秋以降は、その轍が消えて、また元に戻ってしまったかのように見えてしまった。しかし、大晦日の紅白歌合戦の歌の中に、あの夏の轍がまた見えたというのである。
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