ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2012年02月15日(水)
震災俳句
 夏に、たくさんの震災の俳句を聞かせてくれた○○君のお宅を半年ぶりに訪問した。今回も、たくさんの俳句を作っていて、パソコンを開くといきなり、俳句から始まった。今回も40あまりの俳句が一気に綴られた。じっと暖めたれてきたものだ。難解なものにはその都度、説明を入れてもらった。

抜群の力を出して復興す
小さい目懐かしき野をふと見つめ
被災地の緑を夏が深めゆく
ランプの灯待つ人によい願いほめ
若い日の夢も破れた深い海
夕焼けの磨かれた空ぼろの底
 「ぼろ」とは涙が流れたことを言ったものです。正確ではないけれど書きました。唯一の理解者は自分だからこれでいいです。
小さい目罪なく輝きどこ目ざす
未来の手心に触れて隅々に
未来の手理想をつかみ僕をさす
ごみの先道は望みにつながりて
強く握る手は冒険の揺れるまま
楽な日を取りもどし櫓が揺れる
ずんずんと逃げ出さないで積まれた和
理知的な瞳は何に愚を感ず
 なかなか復興が進まないのは理知的な目には愚かに映っているはずなのできっと何かを罪深く感じているはずだから書きました。
ずっと沖 涙の船が遠ざかる
理想の世なかなか来ずに復興す
地位賭けて闘う人のない日本
日本の夢理想を賭けて和をつなぐ
夜ずっと夢にうなされふと目覚め
忘られた歴史に瑠璃の光さし
 昔から津波は何度も襲いかかってきたのにみんなそのことを忘れてしまっているのだけどまた改めて思い出されたということです。
夢の先不気味な声にゴンゴンと
 なつかしい町並みの彼方に新しい街並みをまた作り直してもまた津波に破壊されるかもしれないということです。それ(ゴンゴン)はずっとさいなまれることの表現です。
夜の闇強い笑いを盛り上げず
理解されず夜の暗さに森を行く
被災地に行けば涙のろうそくも
自らの力のなさに轍踏む
 自らの力のなさを嘆きながら轍を追えずに踏んでいる様子です。車は被災地の復興の象徴です。 夏も過ぎまた世は戻り秋刀魚せる
日の当たる轍もまっすぐ未来さす
唯一見た空の果てなる南星
 南の空に一瞬見えた星に未来を願ったということです。
日が沈み波の音のみ休みなし
理想さえろうそくと光れば綿々と
綿々と願いを紡ぐということです。
若き日の忘られぬ道流されず
分相応自らに課さず道を行く
実る穂にセシウムの付き虚しさよ
わずかでもセシウム付けば捨てられて
わずかな音 聞こえることなき悶々と
ビルを支えし原発は惨めな姿をさらし泣く
昔には戻れないとはおかしき世
わずかな灯 分捕らず共に分かち合う
水のゆき轍に残る夢の跡
ランプの灯ともりし道に咲く花を
 わずかな理解者しかなかなか増えないのですがこうして俳句を作っているととても気持ちが落ち着きます。俳句はおしまいです。


 なお、夏の彼の俳句のうち、いくつかをある詩のコンテストに出していた。残念ながら、入選することはなかったが、未発表という条件だったので、このブログでの公表も避けていたので、改めて紹介する。

夜の闇 瓦礫もおおい 月冴える
雪の舞う地震の朝の 鳥静か 
涙枯れ 涙は出ずる 土用波
若き日の記念の写真 砂と空
望みを背 また立ち上がる強き足
地震さえなければと泣く夏過ぎぬ 
     



2012年2月15日 00時35分 | 記事へ |
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