ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2012年02月15日(水)
広がりつつあるコミュニケーション
 ☆☆さんの通所施設では、少しずつ、パソコンで単語を聞き取ることができはじめたという。お母さんのお話や連絡帳の記述から、すでに文字の読み取りはうまくいっているのだが、一文字読み違えると、その後が続きにくくなっていることがわかる。これは、一文字違ってしまうと、次の文字をどうするか☆☆さんの方に迷いが生じてしまうので、実は、読み取りは一気に困難になる。だから、読みとられた文字が少ないのは、読み取りそのものに問題があるのではなく、文字が間違えて読みとられた時の対応の問題になる。しかし、大切なのは、こうして一文字一文字読みとられていく時にそこにうまれている心と心の交流だと思う。たくさん読みとることができれば「便利」だけど、もっと大切なものがあり、☆☆さんのやりとりには、その一番大切な心と心の交流があるように思った。☆☆さんは、次のように書いた。

 ばらばらな体と心の私のためにいつもありがとうございます。私は先生たちがいつも真剣に時間をかけて聞いてくれるので心から感謝しています。人間として尊重されて何よりの幸せです。どうして先生たちはあんなにやさしいのかといつも不思議な気持ちになります。世の中の人たちは私たちのことなど全く気にも止めていないのになぜ先生たちは私たちに心から希望を与えてくださるのでしょうか。人間として認められてとても幸せです。パソコンはゆっくりでいいです。無理のない範囲で少しずつお願いします。もうしっかりと読みとってくださっているのでご安心ください。どうすればいいのか教えてほしいとおっしゃっているので一つだけ言うとわかっている言葉でもやって安心して練習できればずいぶん楽になると思います。でも私は先生方が思うとおりにやってくださってくださればそれでいいです。私でうまく行けるようになったらぜひほかの人の気持ちも聞いてほしいです。なぜならみんなもきっとわかっているはずだからです。ゆっくりでいいからよろしくお願いします。これからもどんな困難があっても乗り越えるつもりなのでよろしくお願いします。

 ☆☆さんのこのきめ細かな心遣いの向こうに、懸命に☆☆さんに寄り添おうとする職員の方々の姿がはっきりと見えてきた。
 この言葉と一緒に、この日は、こんな詩も書かれた。

小さな蜜のなる花に
私はとまり夢を見る
蜜の香りが体に満ちて
私は望みを叶えようと
静かに理解の旅に出る
敏感な体に出た苦しみは
きっと珍しい匂いがするはず
誰かその匂いに気がついて
私に声をかけてほしい
匂いのままに私はずっと
みずからのいい願いを大事にしながら
よちよちと歩き出そう
ランプの明かりが懐かしい願いを照らし
私は不思議な夜の深い闇に紛れて
私を何とか未来に向けて
つまらない悩みは消し去って
そんなよい世界を探しに行こう


 ☆☆さんの周りには、もう「よい世界」が広がっている。

2012年2月15日 06時28分 | 記事へ |
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