ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2012年02月21日(火)
40年を振り返って
 私が30年来関わりのある40代の全盲の女性○○さんは、

 私たちをもっと理解してもらいたいので残りの人生は私は自分の考えを少しずつ伝えていきたいです。小さい時からのどうにもならない気持や茫然とした日々のことなどを語りたいです。

と述べて、長い回想の文章を綴った。

 私が生まれたのはもう40年も前に遡りますがその頃はまだ世の中は私たちのような子どもを受け入れるような時代ではありませんでした。残念ながら地域のどんな場所にも私たちの居場所はありませんでした。なつかしいのはそんなときに私たちを50年も前から理解しようとしていた先生たちがいて私たちを受け入れてくださったことです。わざわざ私たちを人間として認めてくれて何かできることがあったらしてあげようと色々な努力をしてくださいましたがまさか私たちに言葉があるとは思わなかったようでした。どんな小さなことにも喜んでくださって本当に幸せでした。どうして私たちのような存在に底まで心を向けてくださるのかとても不思議でしたがみんなほんとうに一生懸命でした。小さい理想の世界がそこにありました。小さいながら望みのかなう世界でした。私たちはなかなか理解されないので何でも喜んでくれる先生たちが最大の理解者でした。
 そんなところから始まった私の人生ですがみんなに比べて恵まれていたのは私が中島先生に出会えたことです。中島先生は特別な思想の持ち主で私たちが偉い存在であるとずっと言い続けてくださいました。何もできない私のことを偉いなどと言ってくださった人は初めてでしたからとてもうれしかったです。わずかな夢は中島先生の思想が広まることでしたがなかなか本気で先生の思想を受け止める人は少なかったです。中島先生は本気でおっしゃっているのにまるで冗談のようにとらえている人も少なくありませんでした。私たちのことを相手がどう考えているかはすぐにわかりますがほんのわずかの人しか私たちを本当に偉いとは考えていませんでした。
 わざわざ中島先生のことを否定する人も誰とは言いませんがいたのも事実です。学校では特に受け入れられなかったことを私は身を持って体験しました。
 それでも小数の心ある先生が中島先生に従って私たちのことを大切にしてくれました。どうして私たちのことをそこまで大切にしてくれたのか今でも不思議です。たまにそういう先生が現れるととても存分に誰にでも伝わるのかもしれないと期待に胸を膨らませていました。だけどなかなかそういう先生は現れませんでした。
 夏の全国大会はとても楽しみでした。私たちの話で持ちきりになるからです。私たちが主人公になれる唯一の機会でした。なぜ中島先生の話が好きだったかというとまるで私たちが何でもわかっていると言うかのように説明してくれたからです。私たちは何でもわかっているなどと言われることは絶対になかったので本当にうれしかったです。みんなもきっとそう叫びたかったと思いますしまさに私やK君は本当に叫び声を上げていました。すると必ず中島先生は必ず万歳というように返してくれていました。
 中島先生が今のこの姿を見たら何というかとても楽しみですがそれは永遠にかなわぬこととなってしまいました。人生の半ばを過ぎて始めて話すことができるようになって本当にうれしかったですが本当に中島先生には見せてあげたかったです。だれでも言葉があって何でもわかっていると言うことが証明されたのですから。誰よりも中島先生が喜んでくれたはずです。
 誰にでも言葉があるというならもう知恵遅れなどという言葉はごめんです。何度その言葉に傷ついてきたことでしょう。誰にでも言葉が備わっていて深い考えを持っていると言うことをわかったからには理想はその考えに従って福祉も教育も考えを改めなければみなりません。わずかな明かりですが確実に明かりはともり続けています。
 どうしてもなかなか信じられない人もいるかもしれませんがそんな人もしだいにいなくなるでしょう。残念ながらまだまだですが早くそういう時代が来ればいいなと思います。中島先生の思想を誰にもわかるようにはならなかったようにこの方法も簡単には伝わらないと思いますが何とかならないかと思います。たくさんの仲間が私のように話したがっているので早くそのことが伝わればいいと心から願っています。大事なことは私たちが人間として扱われることなのでよろしくお願いします。
 今日はたくさん書けてよかったです。私はまた自分の経験を語りたいと思いますのでよろしくお願いします。ありがとうございました。




2012年2月21日 21時52分 | 記事へ |
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