ある関わり合いの場で、パソコンで綴った文章を新聞に投稿してほしいというふうに頼まれた。意を決したような強い内容に、私は一瞬ひるみそうになったが、私たちにそういう純粋な思いを遮る権利はまったくないと思った。しかし、本人が特定されると、いろいろむずかしいことが起こることが予想されたので、匿名でいいかと尋ねたところ、「なまえさえないのはつらいです。ゆいさんと書いてください」と返事が返ってきた。そこで名前だけを出すということで投稿したところ、3月5日の毎日新聞の「みんなの広場」に掲載された。
この問題提起は、現代の障害観の根本的な見直しを迫るものだ。容易には受け入れられるものではないだろうが、同じ思いをしている人たちに届けばと思う。
この日、彼女は、こうした思いを次のような詩でも表現した。
私たちの世界
地震と津波でひっくりかえった私たちの世界
なつかしい街並みも小さいときに遊んだ公園も
みんな流され消えてしまった
なぜ自然はそんなにむごいのか
理解しきれぬごんごんとしたゆゆしい思いが
私をできない存在へと追いやろうとする
だけど人間はけっして希望をなくさなかった
人間は夢をなくさずにもう一度立ち上がり
人々はどうしようもない悲しみをかかえながらも
紅色(べにいろ)の未来をめざし
望みを背にして歩き始めた
分相応の人になるのではなく願いをめざす人になって
人間としての誇りをかかげて
夜の闇から朝の光にむかって歩み始めた
私もまだ被災者のように取り残されたままだけど
いつか世の中に認められる日が来るだろう
その日を夢見て今を生きていこう
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