ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2012年06月01日(金)
緑の風を信じてきたことがようやく報われる
 ○○さんは、今回、少し厳しい口調で、なかなかわかってもらえないことのもどかしさを語りました。しかし、その響きの中には、不思議な余裕が感じられました。わかってもらえないことが、ため息やもどかしさばかりを生み出していた時期がありました。しかし、今、まだ、わかってもらえない状況はあるものの、確実に通所施設の職員の中にも、きちんと話しかけてくれる人も現れてきたのです。そして、次のような言葉へとつながっていきました。

 私たちはもう人間として認められたと思っているのでもう少しですね。人間として私たちはもう少し人間らしい扱いをされたいと思います。(…)私にとってどうにかして人間らしく生きることが夢だったので何とかして人間としての尊厳を確立したいです。理想は私たちの言葉を世の中の人が受け入れることですがわかってもらえる日はもうそんなに遠くはないでしょうね。どうしてなかなかわかってくれないのかとはがゆいのですがわずかな人が理解してくれるだけでなかなか広がらないです。汚れた心ではなく私たちの心がもっともっと美しいままであるためには理解されなくてはなりません。わずかなあかりはこうして言いたいことが言えるようになれたことです。ところで私の詩を聞いてほしいです。

なつかしい夢をもう一度取り戻すために
私は長い旅に出る
長い旅は夜の暗闇を抜けて
明るい光の射す朝を目指す旅だ
もう少しで夜は明けるはず
東の空はもうすぐ白みそうだ
理想の朝日を待ちこがれながら
私は今日まで耐えてきた
わずかな希望を夢見ながら
今日までずっと冒険を続けてきた
緑の風を信じてきたことがようやく報われる
わずかな緑の風は草原に吹き渡り
私たちを未来の願いへと駆り立て続けてきたが
闇の中で私は何度も風を見失いそうになってきた
もう少しで緑の風が明るい野原の花を揺らしながら吹き渡ることを
まのあたりにすることだろう

 こうして綴られた彼女の詩は、真っ暗な夜ではなく、今まさに東の空が白もうとしている直前の時を歌い上げたものでした。長い長い理解されない時代を彼女は「緑の風を信じてきた」そうです。夜が明けた時、彼女の目に映るのは、花の咲く野原です。



2012年6月1日 08時14分 | 記事へ |
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