ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2012年09月05日(水)
りほさんの詩
 長い間、病院で生活を続けているりほさんのもとを訪ねてきました。彼女は、3編の詩を用意して待っていてくれました。

  字のない国

字のない世界に旅をした
どこにもろうそくはともっておらず
人間としての希望も見当たらなかった
夢もどこにも見当たらず
私はただとほうにくれた
ろうそくのともらぬ世界は
わずかなわずかな遠いあかりが輝くのみ
わずかに空の向こうに
夕焼けの残り火が見えるのみ
なぜかはわからないけれど
私にはろうそくの光が必要だ
文字とはどうして生まれたのだろう
文字はきっと言葉をなくした人が
もう一度言葉を取り戻すために
発明したにちがいない
わずかな声さえなくした人が
もう一度夢を空にむかって叫ぶため
きっと雲を見ながら思いついたはず
きっと最初の文字は
私という文字だったにちがいない


  言葉をなくした世界

なぜだろう
みんなもし私が言葉をはなせていたら
出会うこともなかったはず
まるで私に言葉がないことが
いいことのようだ
みんな言葉のない私の心の声に
その耳を澄ませる
なぜだろう
私は言葉のないことが
しあわせの入口のように思える
ゆいつの私のしあわせへの通路は
わずかなわずかな言葉をなくしたことだ
よい私のドラマは
こうしてようやく始まった


 みずかららしさのあるかぎり

なぜ私は理解されたのか
私はみずからのみずかららしささえわかってもらえれば
それ以上は止めない
だけど私は理解をされた
わずかなわずかなどうにもならなくなりそうな
ごんごんと希望のわきだしてくる泉から
私は理解への鍵を手にした
無難に生きていればすむかもしれない
そんな場所から日のあたる場所へと歩みだした
ずんずんと前に向かっていこうとする私に
容赦なく風は吹きつける
しかし私はもう前に向かって歩み始めた
だからにどと振り返ることはない
みずからのみずかららしさをなくしてしまわないかぎり


 書きためた詩もだいぶたまってきました。先日、お母さんが、これまでの詩をすてきな小冊子にまとめておられました。次回も楽しみです。

2012年9月5日 00時38分 | 記事へ | コメント(0) |
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