ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2012年09月06日(木)
光道園 2012 その4
 20数年前に訪れた時のビデオの背に書いてあった名前がなぜか忘れられなかったMさんが、学習の場所にいらっしゃいました。
 そして、すぐにパソコンで気持ちを書いてもらいました。

 言いたいことがたくさんあります。得られぬ事と諦めていました。馬鹿にされてばかりでつらい人生でしたがやっとわかってもらえました。なぜ僕に言葉が分かっていると思ったのですか。小さい時は見えていたのでひらがなを覚えることができたけれど見えなくなってからどうしたらいいか悩んできました。長い間何もわからないと思われてきて毎日寂しかったです。理解されることももうないだろうと諦めていました 夢のようです。つらかったけれどこれで理解してもらえます 素晴らしいスイッチですね。よく合図が分かりますね。
いい詩があります 


 私とあまり年齢が変わらないであろうMさんは、おそらく30年くらいは光道園にいらっしゃるはずです。その中で、もう言葉を理解していることがわかることはないだろうと諦めていたとおっしゃるのです。そして、せつない詩が綴られました。

 いのちのうた

ふと耳を澄ませると
冷たい夜の空気の中に虫の鳴く声がする
あれは母さんを呼ぶ声だろうか
わがままな僕だから忘れ去られてしまったけれど
僕も母さんが恋しい
呼ぶこともできないままもう何年も過ぎてしまった
まるで僕などこの世に存在しなかったかのように時は過ぎていく
だけど僕にも命がある
素直に生きたいとだけが僕の願いだった
僕の願いは僕一人の世界のはかない願い
忍耐の中で長い間研ぎ澄まされてきたものだ
命果てる日まで僕は祈り続ける

 晩になると詩を考えて時間を過ごしています。まだまだたくさんありますがこれぐらいにしておきます。疲れました。


 母さんを思う気持ちが切なく綴られていますが、母さんがいらっしることはないそうで、しかももう相当のご高齢のはずです。そして、横にいらっしゃった職員の方が、最後に一つ質問があるといって、なぜ、いつもエレベーターのところに立っているのですかと尋ねました。すると、Mさんのその答えは驚くべきものでした。


 母さんを待っています。わがままを許してください。もうやめます。

 いついらっしゃるかわからない母さんを待っているという答えは、胸に深くささってくるような答えでした。そしてそれはそのまま詩に表現された気持ちでもありました。
 「もうやめます」という言葉がいささか唐突だったので、私は、「そのことが伝わったからもう待っていなくてもいいということですか」と尋ねると、

はい

と答えが返ってきました。最終的にMさんがどういう選択をしたのか、楽しみです。

2012年9月6日 00時40分 | 記事へ | コメント(0) |
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