ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2012年09月22日(土)
出生前診断について 〜「ダウン症」当事者からの発言〜
 出生前診断をめぐって、ダウン症の当事者からの意見をいただきました。彼は20才を過ぎたばかりの若者です。肢体不自由も重度で、3年前まで言葉で気持ちを伝えることができませんでした。そんな彼が、しだいに俳句に興味を持ち、毎回、たくさんの俳句を作って私を待ってくださるようになりました。しかし、今回は、俳句よりも先に言いたいことがあるということで、次の文章が書かれました。
 当事者自身の、悲痛な叫びです。

 わずかなあかりがみえた震災からまだ何年も経っていないというのに何と情けない国になってしまったのだろう。僕たちダウン症の子どもはもう生まれない方がいいという議論が堂々とまかり通ってしまってもう僕たちは生きる権利がなくなってしまったも同然だ。よい意見に聞こえるものだってかわいそうな子どもたちという理解の上に語られているものだから僕たちにとっては同じことだ。それになぜ僕たちのことばかり言われなければならないのだろうか。私たち障害者の中でもなぜダウン症のことばかりが取りざたされるのだろう。もう僕たちには生きる場所さえなくなりそうだ。なぜならもう僕たちはもう少しでただの甲斐性なしのお荷物だということになってしまうだけでもう同じ人間だということが誰にも語られなくなってしまうだろう。だから僕は人間としての希望をなくしかけた。だけど僕にも人間としての尊厳がある。長い間話すこともできないまま人間として認められる日を待ち続けてきたけれどようやくそれがかなったと思ったとたんにこの騒ぎだ。僕たちの仲間が毎日殺されているという事実がたまらない。涙を流しても流し尽くせない悲しみが僕を襲っている。わずかな希望はこうして僕の思いが聞き取ってもらえたことだ。敏感な仲間たちはみんなとても悲しんでいる。そして僕は存分に叫びたい。僕も同じ人間だと。

 そして、さらに次の俳句が綴られました。

誰を没 誰を生かすと 悲しき世
忘れられ 葬り去られる 我が仲間
わが仲間 生まれることなく 涙する
未来消え 生まれるべきではないという
ばかばかし 微力なわれも抗議する
夏のゆき理想の消えて緑枯れ
わずかな理 われらも同じ人間さ
わずかな身 理想なくして ひとり泣く
夢も消え わずかともりし灯も消えぬ
よい報せ 届かず 船は座礁せり
地の果てに 追いやるごとき 世論 燃ゆ
理が勝てず 現実を見よと 空しき日
理の立たぬ 悶々とした日 夜深し
わだかまる 人間の違いが 否定され
名前さえ 呼ばれず 返事をすることもなし
僕の名は ダウン症かと 見まがう日
わずかな目 われを守れり 夏ゆきぬ


 

2012年9月22日 20時42分 | 記事へ | コメント(0) |
| 家庭訪問 / 出生前診断 / ダウン症の当事者 |
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