ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2012年12月10日(月)
出生前診断をめぐって 3人の言葉 12月9日
 日曜日、重複障害教育研究所でお会いした3人の方々が、みな口々に、出生前診断について語りました。最初に40代のNさんの言葉です。

 残念なことがありました。というのは私たちの敏感な感性を裏切るようなできごとがあったのです。それは敏感な感性にはたえられないようなことでした。わずかなわずかなことかもしれませんが私たちにはとてもつらいことでした。いま通っている施設でダウン症の人に向かって自分はどうして生まれてきたのかあとで考えたらいいという人がいたのです。ふつうなら生まれてこれるはずのないあなたがわざわざ生まれられたのだから感謝しなさいというおそろしいことを言い始めたのです。私は耳を疑いました。たいへん衝撃的でした。なぜあんな言われ方をされなければならないのでしょうか。何度考えても納得がいきませんでした。この前からこの話題について話してきましたがとうとうこんな発言までみられるようになってしまったのですね。悲しい世の中になったなあと泣きたい気持ちです。なぜそこまで世の中の人は堕落してしまったのでしょうか。私は私らしく生きたいのにそれさえ認められない世の中になりそうです。なぜ地震でわざわざ同じいのちということを見直せたはずなのに残念でなりません。黙ったままで言われっぱなしになるのはとても理不尽な気持ちがします。わざわざ今日そのことを言ったのは私たちの大事な仲間がまだまだつらい思いで生きているからです。長いあいだ私たちは沈黙をしいられてきたのですがせっかく話せるようになってもどうせ私たちは世の中のやっかいものかと思うとやりきれません。

 次はIさんの言葉です。この日、彼女の通っている通所施設から、3人のとてもすてきな職員さんがお見えになり、実際にスイッチの練習などにも挑戦してくださったりして、とてもすばらしい時間を過ごしたあと、この文章をつづりました。文中に登場する職員さんとは、この方々のことです。

 つらいことがありました。それは私の理想的な目的がなくなりそうになったので困っています。わざわざ私たちのことを生まれてこないほうがいいなどという人が現れたことですが私たちはみんなごらんなさい私たちをという気持ちで生きているのでろうそくのあかりが消えてしまいそうになりました。どうして私たちを否定するのでしょうか。私たちも同じ人間ですから私は悲しいです。敏感な人たちはわかっているはずです。もう私たちを理解してくれるのは理想にもえた人たちだけだということを。長いあいだ私たちはじっと黙ってきましたがもう黙っているわけにはいきません。長いこと理解されなかったけれどようやく理解されて喜んでいたのもつかのまのことでした。世の中の人たちはもう私たちをのけものにしようとしているので私たちは黙っているわけにはいきません。人間としての尊厳を取り戻さなくてはなりません。わずかな希望は私をこんなにも大事にしてくれる職員さんたちがいることです。なんとかしてごらんなさい私たちをという私たちの気持ちを世の中に届けなくてはいけません。よい世の中になってほしいです。私たちを大事にしてくれる世の中でないとみんなもよく生きられないと思いますから。

 3人目はKさんです。自分たちが議論の輪からはずされてしまっていることへの抗議です。 

 
 なんでぼくたちは生まれてこないほうがいなどと言われなくてはいけないのでしょうか。テレビなどでさかんに話されています。はい家でみました。なぜ優生思想などというものがあるのでしょうか。私たちの私たちらしさなどもう認められない世の中になってしまいましたね。憂鬱な日々が続いています。私たちをなきものにしようという思想にはもう別れを告げたいです。やめてほしいのは私たちを議論の輪からはずすことです。なぜ私たちを議論の輪からはずすのでしょうか。なぜ私たちは輪の中からはずされなければいけないのでしょうか。輪の中に私たちを入れればきっと私たちをなきものにしようという意見はなくなるはずです。何とかならないでしょうか。つらいです。


2012年12月10日 00時39分 | 記事へ | コメント(0) |
| 研究所 / 出生前診断 |
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