ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2013年06月05日(水)
病魔去れ ここには天使の見守れり
H君とSさんの病室を訪問しました。H君は、中学生になったので、この機会に、病院のみなさんにお礼をきちんと言っておきたいと、文章を綴りました。

   中学生になって

 ぼくはまれな難病を背負ってこの世に生まれてきましたがN病院のみなさんのおかげでここまで成長することができました。N病院に来なければ今のぼくはありません。 
 なつかしいのはよい治療法がないけれど最善をつくしますと母にT先生が告げた日のことです。よい治療法がないのは残念だったけれど最善をつくしてくれるなら悔いはないとぼくは小さいながらに考えました。
 なつかしいのはN病院の看護婦さんたちがぼくにこげパンのキャラクターを見てとって何度となくプレゼントを買ってきてくれたことです。なかなかわかりにくい言い方になってしまいますがぼくは看護婦さんたちの必死の愛情を感じました。だれもがぼくを強い子どもになって困難を乗り越えられる子どもになってほしいと願っていたのだと思います。だからこげパンだったのだと今でも思っています。
 なつかしいのは人間として認められた日のことです。人間として認められたのはのどから手が出るほどほしかった言葉を手に入れたときです。どういう偶然なのかわからないけど柴田先生がぼくのところに来てくれてまだ三才にもなっていないぼくにひらがな教えてくれたのです。ぼくはひらがなもまだ読めなかったのですが勇気がわいてがんばって一生懸命覚えました。我が意をえたなどという言葉はまだ知りませんでしたがろうそくにあかりがともった気持ちがしたのをよく覚えています。
 なつかしいのはSちゃんとおなじ部屋になった日のことです。初めてぼくにも仲間ができました。
 ぼくはほんとうにこの病院でたくさんのしあわせを手に入れました。だから心から感謝しています。ぼくはN病院が大好きです。人間として認めてくれたすべてのスタッフの方々に心から感謝します。


 そして、いつものように俳句を聞かせてくれました。タイトルの言葉もその中の一つです。
  
だれもよき名前を持ちて空あおぐ。
夜に泣く私を案じたやさしき目。
見よわれを小さき体に宿るもの。
技をぼくに使いて未来が開かれし。(技は医療技術のこと)
ばらばらとふる雨の音ただ闇に。
疲れたる自分に待たすことはなし。
ばらばらと雨音のして夜どよむ。
よい未来つくる技術にわれ頼む。
ついにわれ世に届きたりラジオにて。
小さき荷背負いてわれも坂登る。
なつかしき調べに秘密の願いかけ。
ついに来た人間として立つよき日。
自画自賛わが小さきこの人生。
病魔去れここには天使が見守れり。
実の子かとみまごうほどにかわいがる。
人間と夢にまで見し幼き日。
技をなくし立ちすくむ日もあり目に涙。
つがいの鳥仲良く窓でわれ見つむ。
わが涙もっと輝け未来木を。
無我になる光につつまれ臨む日に。
泣き虫も強くもらいし力「レラ」。レラは力の神です。作りました。
挽回しわれは荷の解け身は高く。
人間だぼくは高き声をあぐ。
悩む日は遠くに去りて瑠璃色に。
月に誓う分相応には生きないと。
月に手をさしのべひかりと握手した。
身を粉にす無償の愛をかけられし。


 また、Sさんは、こんな詩を聞かせてくれました。

  夏を越える旅という短い詩を作りました。聞いてください。

夏を今年は越えられるだろうか
そんな願いのような言葉が
梅雨にきまって浮かんでくる
薔薇にとげがあるように
人には苦しみを神は与えた
夏を越えることが私には一つの旅だ
紫陽花の咲き誇る道を過ぎ
枯葉の小道にたどりつく長い旅が私を誘う



2013年6月5日 22時36分 | 記事へ | コメント(0) |
| 小児科病棟 |
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