ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2008年08月31日(日)
大粒の涙とともに ―姉さんへのメッセージ―
 お母さんとの会話のはしばしに登場していたお姉さんを伴って高校3年生の☆☆さんが見えた。お姉さんは大学生、これまで一緒に来たかったけれど、なかなか日程が合わなかったが、夏休み中ということで、何とか時間をやりくりしてくれたとのこと。
 そして、まず、

ねえさんがきてくれたのでずいぶんまえにかいたことだけどまたかきます。

と書いた。そして、目から大粒の涙をポロポロとこぼしながら、次のように続けた。

なかなかりかいしてもらえなくてくやしいとおもうけどやっとことばがつかえるようになったのでばかにされずにすみます。ふつうのがっこうにいきたかったけどねがいはかないませんでした。

 時折、姉の方を振り返って、涙を浮かべながらもにっこりと笑う。母とはちがう、感情をともにぶつけ合う関係の姉妹の姿がそこにあった。たとえ悲しい文章でも、こんなふうにポロポロと涙を流しながら文章を綴る姿に出会うことは、ほとんどといっていいほどない。姉に対しては、くやしい思いがそのままストレートに表現されていくのだろう。とても仲のいい姉妹なのに、姉の行く学校に妹は通えなかった。そんな思いも切なく伝わってくる。
 そして、「けっこん」という言葉をきっかけにして、文章はそのまま姉へ向けられたメッセージとなっていく。

けっこんだってしてみたいけどなかなかきぼうをじつげんさせることができそうもない。でもねえさんにはいいじんせいをすごしてもらいたいです。ふこうだとはおもってないのでしんぱいしないでください。わたしとねえさんはとてもなかがいいのでたすけあっていきたいとおもいます。うたがとてもじょうずなのでいつまでもうたをわすれないでください。すてきなひとができたらしょうかいしてください。

 自分の夢が実現しにくい悔しさを表しつつも、姉の幸せを願っていた。そして涙は、止まることはなかった。
 涙とともに綴られる文章は、しかし、とても力強さを秘めたものだ。「ふこうだとはおもっていない」「たすけあって」という表現には、けっして自分を失うことなく自分の今を見つめている☆☆さんがいる。
 もちろん☆☆さんの涙は、ねえさんとお母さんの涙も誘ったが、不思議と空気はある明るさを失わなかった。これまでのくやしかったことやこれからの不安などが言葉になっていても、それを分かり合えることのすばらしさが、底に流れていたからだろう。
 関わり合いをいつもサポートしてくれるこの学校の先生が、☆☆さんが使用しているスイッチ一式を用意してくださり、姉さんに手渡した。
 強い絆で結ばれている姉妹が、細やかな思いのひだを、日常生活の中で、伝え合えるようになればと心から願う。


2008年8月31日 01時57分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
| 自主G多摩3 |
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