ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2008年09月20日(土)
「人間としての当然の願い」 「みんなとはなしができること」
 隔月で通う都内の通所施設で、3人の方とパソコンで関わった。8月時間が作れなかったので、今回は3ヶ月ぶりだった。この日3番目に関わった○○さんは、二人の文章を受けて綴り始めた。
 最初は、2回前から文章を綴り始めた☆☆さんのことだ。この日は、ご両親も様子を見にいらしていた。
 
☆☆☆さんができないなんていがいなことですからぼくはかけるとしんじていました
おかあさんとおとうさんがおはなしをききにくるときいてうれしかった
えがおがきれいなふうふでした
となりでみてましたね
なかなかできないかもしれないけれどあきらないでさへいたらかならずできますからがんばってください
 
 現在の常識では、言葉を綴ることを予測するのは容易ではない☆☆さんだが、○○さんの目には、当然書ける人だと映っていた。私たちが彼女にパソコンを出すまでには、だいぶ時間が経過したから、その間、○○さんはずっと、その日が来るのを待っていたのだろう。「がんばってください」とはご両親に向けられたもの。家でもやれるようにとおっしゃっていたご両親へのエールである。
 次は、◇◇君の文章について。◇◇君は、5月に亡くなった女性への思いを切々と綴った。親しい友を亡くした絶望的な思いから始まり、最後は、自分自身が力強く生きていこうという言葉で結ばれる長い文章は、張り詰めた気持ちが一貫して流れる拡張高い文章だった。その文章を聞いて○○さんは、次のように綴る。

◇◇くんがかいていたのはすてき
いなくなってもにんきがあるなとおもう
▽▽さんはかわいいしみりょくてきだからさびしいとおもう

 彼もまた、昨年12月に彼女が初めて文字を綴った日に、「▽▽さんはのぞみをかなえられてよかった。てがつかうことができなくてもわかっているひとがたくさんいるけどなかなかいいたくてもいえなくてかなしい。このことはりかいされにくいけれどさんぴめぐるぎろんよりもだいじなのはなかなかはなせないひとのきもちです。」と綴り、5月には、「▽▽さんがなくなってさみしさがつのりかなしみがふえてつらいひがつづいています あうことがかなわなくなってしまいなんとなくくやしい あいたかった とつぜんのことで(…)」と書いていた。
 亡くなった方も含めて、○○さんの通う施設には、言葉でのコミュニケーションは難しいと思われながら、パソコンで気持ちを表現できる人が4名いることになる。初めは、何よりも表現することが先だったが、こうして、少しずつ互いに書かれた言葉をやりとりできるようになり、○○さんの中に新しい願いが生まれつつある。それは、次のようなことだ。

ねがいはみんながねがっていることをなんでもいえるようになることです
ねがいはかんたんにきもちをひょうげんできるようになることです
ともだちとどんなことでもはなしたい
もっとかんたんにはなせるといいとおもう
とてものぞめないとおもっていたけどすいっちがみつかってよかったです
このすいっちをなんこもつくってみんなとはなしたい
なんこもあればみんなではなしができます
にんげんとしてのとうぜんのねがいです
すばらしい
ほんとうのすばらしさはみんなとはなしができることです
ねがいをかなえるためにがんばりたい
そのひがくることをゆめみてがんばりたい

 人間としての当然の願いがかなえられる日が、まだ、夢見る先のできごとである。「すいっちをなんこもつく」り、「みんなではなしができるひ」の夢を実現すること、あちこちで語られ始めたこの思いがかたちになるために、具体的な一歩を前に向かって出し続けていかなければならない。


2008年9月20日 13時13分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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