とびたつ会のTさんのこと
	
		
			| サウンズアンドシンボルズと呼ばれているコミュニケーション手段(シンボルの絵を使って気持ちを表現するもの)を、目の合図で使って気持ちを表現してきたTさんが青年学級に現れたのは10年近く前のこと。しだいに帰りには飲み屋にも行くようになり、飲んだ席で、パソコンの練習をしないかと行ってパソコンの練習が始まった。足で二つのスイッチを操作して綴ることを始めたが、なかなか言葉が的確に選べず練習を続けてきて、少しずつ進歩してきていたが、長い文章にはならなかった。途中、シンボルをパソコンに組み込んだり、足でマウス操作ができるようにとスイッチを改良したりといろいろ取り組んできた。最初は、夜、8時過ぎにおじゃましていたのだが、だんだん忙しくなって、元公民館職員の松田さんが始めた「共同学習識字の会」での学習におまかせするようになっていった。Tさんが、「とびたつ会」に移るとなかなか会う機会も減ってしまっていた。松田さんとの学習もずっと継続されてきたが、最近、スイッチ操作がむずかしくなったとのメールをもらい、青年学級の後の時間に来てもらうことにした。そして、トマトハウスでさっそく新しい方法に挑戦してみた。上手に動く足ではなく、ほとんど自由のきかない手にスライドスイッチを握ってもらい、こちらがどんどんスイッチのオンオフを繰り返すという方法だ。すると、あんなに、足では選べなかった文字がすらすらと選べていった。 まずは、その感想である。
 
 ふしぎです
 きもちがそのままことばになっていきます
 じをみつめつずけるのがたいへんです
 なかなかのぞみどおりにいきません
 てにちからをこめただけでえらべるのでらくです
 すいっちがすむーずです
 よくわかります
 もっとはやくからやっていればよかったとおもう
 らくなのでこっちのほうがいい
 
 彼がうまく文字を選べない理由が、字を見つめ続けることのむずかしさにあったとは、まったく意外だった。
 
 のぞみはぐるーぷではなしあうときにやれたらいいとおもう
 せっかくのものだからとびたつかいでつかいたいとおもう
 ねがいはてをつかってはなしをすることだったからかなってうれしい
 なぜよみとることができるの
 そのほうほうをみんなにもおしえてほしい
 ほんとうにすばらしいやりかただとおもう
 まつださんにもおしえてほしい
 はやくできるようになってほしい
 のぞみはなんにんもできるようになってぼくたちのつうやくをしてくれることです
 
 ここで、誰かに変わろうかというと、すかさず彼は女性スタッフを指名。
 
 ◇◇さんこんにちはすんでいるのはどこですか
 もしかしたらひとりぐらしですか
 どうやってくらしているのですか
 
 と、書く。まだ、◇◇さんとだけでは、うまくいかないが、結構何文字かは読み取れた。そして、最後にこんなことをちゃっかり付け加えた。
 
 ぼくとくらしませんか
 
 ここから場所を居酒屋に移す。飲み物や食べ物が並ぶテーブルの上にパソコンをおいて、飲みながら打ち始めた。その中の一部は以下の通りだ。
 
 ひとりでくるしんできたことをことばでかたりたいとおもう
 ほんとうのすがたをしってもらいたい
 のにさくはなのようにのおんなのこもしゅつえんしてもらいたい
 ぼくのきもちにはそんなひとたちのことがずっときにかかっています
 ぼくのきもちしかひょうげんしていないのでほかのひとたちのきもちもひょうげんしてもらいたい
 すぎたことをいってもしかたないけなどみらいにむかってぼくたちのきもちをつたえていくひつようがあるとおもう
 ねがいはたくさんのひとにりかいしてもらうことです
 けっしてまけられません
 てをつかってはなせることをよのなかのひとにつたえたいとおもう
 りかいしてくれるまでうったえつずけていきたいとおもう
 くるしみやかなしみをつたえていかなければいけないとおもう
 りかいしゃをふやしていかなけれびいけないとおもう
 きっとわかってくれるひとがあらわれるとおもうのでがんばりたい
 
 彼は、青年学級やとびたつ会に通う重度の障害のメンバーの中で、唯一シンボルを使って目で語れることができるので、いろいろな場所に積極的に参加し、シンボルで表現した気持ちをいろいろなかたちで訴えてきた。だが、やはり、うまく話せない仲間の気持ちが気になっていたというのである。
 最後に文章はこう結ばれた。
 
 このほうほうではなせるひとがたくさんいるかもしれないとおもうとむねがはりさけそうになる
 ぼくはわかってもらっているからいい
 でもたくさんのなかまがくるしんでいます
 このことをつたえていかないといけないとおもう
 ぼくはまけない
 
 
 
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		2008年10月7日 15時41分
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感動で涙があふれました。このあとをどうするかが、大きなかだいです。
ありがとうございました。次の期待にも応えてくださいませ。