ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2008年10月22日(水)
苦しい時にいつも言葉を思い浮かべているのでわかります
 土曜日、新しい中学生の少年と出会った。これまで、お母さんがコミュニケーションの様々な工夫をして、カードの選択などによって、意思表示ができるようになってきたとのことだった。
 表情や視線から、いきなり2スイッチワープロに挑戦したが、難なく使い方をマスターして、綴り始めた。まずは、名前と「おかあさん」から。

○○○(名前)おかあさん


 これまで、いろいろな試みをしてきたお母さんだからこそなのだが、選択課題などの実感では、ひらがなはまだむずかしいのではないかと感じておられたお母さんは、「まだ、文字はこれからゆっくりなんですけど」とおっしゃったので、本人に聞いてみた。その答えは、次のようなもの。

しっていますちいさいときにおかあさんがおしえてくれました

 さらに文章は続く。
 
ねがってきました
おかあさん ずっとわかってました
なかなかきかいがなかった
すいっちがかるくていい
すごくうれしいかんげきです
このすいっがほしいです
ふしぎです だれからもことばがわかるとはおもってもらえなかったのにせんせいはわかったのですか

 多くの方から尋ねられてきた問いだった。私だってわからなかったこと、大勢の障害の重い方々との出会いが私を変えていったことをいつものように、説明した。

すごいね
しんじてもらえてうれしいです

 何とか、お母さんに実感してもらいたかったので、生活へと話題を移し、好きなことは?と質問した。

すきなものはしいでぃをきくことです
くるしいときおんがくをきくときもちがはれます
ねがいはせかいのいろいろなおんがくをきくことです

 お母さんは、首をかしげた。お母さんの理解では、彼の好きなことは電車に乗ることだったからだ。
 彼は、いくつか、発声がある。「いや」「はやく」「はい」などだが、ワープロで文字を綴りながら、時折、「いや」という声がする。とりようによっては、無理強いしているようにも見えかねないので、これも聞いてみた。すると答えは、次のように返ってきた。

こえはこまったときにでます

 確かに、うまく選択できなかったりした時に出ていた。
 そして、さらに気持ちの吐露が続いた。

きもちをうまくあらわしたいとおもいますがなかなかうまくいきません
このすいっちがあればきもちをつたえることができる
とてもできないとおもってきたけどやっとすいっちがみつかってとてもうれしいです

 ここで、「つかれました」と書いたのでいったん終えた。そして、お母さんといろいろなやりとりをしていたのを聞いていたので、もう一度、最後に一言あったらと誘うと、次のような文章が綴られた。

くるしいときにいつもことばをおもいうかべているのでことばはよくわかります
べんきょうしてこなかったけどじぶんでべんきょうしてきたのでわかります

 これまでの努力なさってきた経過があるだけに、お母さんにとってはにわかには信じがたいようだった。ただ、なかなか一つのことを持続しづらいと言われているそうで、1時間以上もスイッチから手を離すことなく集中していたことを、とても驚いておられた。
 次回が、お母さんとのやりとりもとても楽しみだ。
 

2008年10月22日 00時58分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
| 自主G埼玉1 |
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