ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2010年12月02日(木)
詩と詩作 銀色の悲しみ そして 愚について
 中学生の○○君に久しぶりにお会いした。○○君は、歌と深い思索に満ちた言葉を聞かせてくれた。

 言いたいことがあります。いい歌ができたので聞いてください。外国から来た小さい女の子に捧げる歌です。いい詩ですから聞いてください。

昨日の悲しみ涙とともに
流して続きの夢を見よう
忘れなければ涙はけしてかわかない
泣くのはやめてりんどうの花に
悲しさ元気に告げて
不思議な祈りを捧げよう
じっと耳を澄ましていれば
未来は美しい調べとともに
りこうな響きの旋律にのって
本当のよい願いをかなえてくれるだろう。

いい歌ですか。 悲しい気持ちを歌にしました。みんなもきっとこういう気持ちを持っていると思います。外国から来て悲しい悶々とした気持ちを持っている女の子を考えながら作りました。銀色の悲しみという題です。ずっと考えてきたので不思議な気持ちです。自分の歌がまさか聞いてもらえるとは思いませんでした。


 歌のメロディーも聴き取ると、今度は「愚」をめぐる話になった。

 愚行という言葉がありますがどういう意味ですか。愚という言葉が気になっていましたから聞いてみました。愚という言葉、強いて言えばずっと変わらないという境遇のことですか。
(それはどういう境遇のことですか?)
 僕のような状態のことです。
(私にはよくわからないけれど、愚という言葉は仏教では、大愚とか安愚というような意味でも使われますね。)
いい言葉にも使われるなんて驚きました。哲学のことはよくわかりませんがずっと均等ということを考えています。はい、どうして願いが僕にはかなわないのかということをいつも考えています。答えは愚という言葉の中にあります。すぐには理解できないかもしれませんが愚に生きていればそのうちに願いはかなうと思っています。みんなもきっと同じようなことを考えていると思います。時間そろそろですか。ありがとうございました。分相応の人生を越えていい人生を生きたいです。

 とうてい誰も説明できない重い障害のある○○君の境遇について、懸命にみずから問い続けている姿があった。容易にコメントなどできるものではない。しかし、ここには、深く追求する中で、たくさんの絶望を乗り越えてきた彼のひたむきでたくましい思いがあるような気がした。
2010年12月2日 16時46分 | 記事へ |
| 学校 |
ルネの詩
 今年度から青年学級に参加したHさんとの言葉と詩を紹介したい。Hさんは自閉的と言われる方で、自由に話をすることができない方だが、6月に初めて出会って以来、短いながら、会話を続けてきた。Hさんは、私の顔を見るとすっと近づいてきて、気持ちを伝えようとしてくる方だ。20代前半のHさんのまなざしは、若々しく力強い。

 自分にも考えがあるということをなかなかわかってもらえなくてつらいけど、こんなやりかたがあるとは思わなかった。忘れられないのはわずかばかりの希望さえわかってもらえないことです。わずかばかりの希望とは理想をよいものにすることです。わずかばかりの希望を持って生きてきたけどこれで夢がかないました。わかってもらえてうれしいです。勇気が湧いてきました。

昔のルネはいったいどこにいったの
昔見た未来はどこに消えてしまったの
わかってもらえないままルネは遠い世界に旅立った
夢をかなえることもなく涙を拭いてもらうこともなく
ルネは遠い世界に旅立った
夢ならさめてもらいたい
忘れられない私の昔の思い出だ


理想的な方法ですね。小さいゾンビのような私のがんばりがようやくかたちになりました。うれしいです。人生をもう一度やり直したいです。いいやりかたを発見しましたね。理想は私たちの気持ちをもっと伝えたいです。私たちを世の中で認めてほしいです。みんなの気持ちをどうしても世の中に伝えたいです。ぞんぶんに伝えたいです。わかってほしいです私たちのことを。人間だからわかってほしいです。真ん中で生きていきたいです。悶々とした気持ちで生きているので何とかしたいです。小さいときから言いたいことが言えずに寂しい思いをしてきました。みんなも同じだと思います。
2010年12月2日 16時34分 | 記事へ |
| 青年学級 |