ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2013年07月24日(水)
いのちはみんな同じ
 私の大学のある横浜市青葉区を中心としたフリーぺーバー「ビタママタイムス」というのがあります。そこに、私の大学の教員が交代で子育てに関わるエッセイを掲載する「すくすくポイント」というコーナーがあります。そこに、先日次のような文章を寄せさせていただきました。
  

  いのちはみんな同じ

 子育てとは、目の前の自分の子どもだけを相手にするものではなく、広く社会の中で取り組まれるべきものでしょう。そんな広い意味での子育てにとって気がかりなことがあります。それは、私たちの社会が誰かを排除することに鈍感になっているのではないかということです。誰かを排除する社会には不安がつきまといます。なぜなら今度は自分が排除されるのではないかという恐れが生まれるからです。もし子どもがつまづきを抱えてしまったなら、今のような社会では親も子もいっそう不安を募らすことになりかねません。
 昨年の夏以降、出生前診断について議論されるようになりました。ここはその是非を議論する場ではありませんが、マスコミでは語られていない大切なことをご紹介したいと思います。
 私は障がいのある方々が気持ちをパソコンで表現することの援助をしていますが、その中であるダウン症の少女が、深くうち沈んだ様子で「わたしはうまれてこないほうがよかったの」という悲痛な言葉を綴りました。私たちには生まれる前のいのちと生まれてからのいのちは別だという気持ちがあるため、出生前診断の話をすることが今生きている人を否定することになるとは思いません。しかし、当事者にとっては、直接自分自身が否定されることなのです。私たちは少女の胸をこんなにも傷つけていながら、そのことに気づいてさえいないのです。
 30代のダウン症の女性は強い抗議の言葉を書きました。

 わたしはゆうきをだしていいたいです。おんなじくうきをすっておなじみずをのむおなじにんげんだということを。おんなじちがからだにながれているおなじにんげんなのだと。にんげんということばがこれいじょうこわされないように。

 また、20代のダウン症の男性は俳句に思いをぶつけました。

だれをぼつだれをいかすとかなしきよ
(誰を没誰を生かすと悲しき世)
わすれられほうむりさられるわがなかま
(忘れられ葬り去られるわが仲間)
ちのはてにおいやるごときせろんもゆ
(地の果てに追いやるごとき世論燃ゆ)
ぼくのなはだうんしょうかとみまがうひ
(僕の名はダウン症かと見まがう日)。

 どんないのちも愛おしむ心が社会に満ちていた時がありました、それは、あの大震災の直後です。3月11日に生まれた赤ちゃんの映像だけで作られたユニセフのハッピーバースデーというCMには障がいのあるお子さんの姿も自然に映されていました。わずか2年前のできごとです。
 すべての人を尊重する社会でこそ本当に安心できる子育てができるというのは、きれいごとにすぎないのでしょうか。
2013年7月24日 11時56分 | 記事へ | コメント(1) |
| 出生前診断 |
銀の夢断たれた魂 路頭満つ Sさんの俳句
 Sさんのお宅を訪問すると今回もまたたくさんの俳句を聞かせてくれました。

銀の夢断たれた魂 路頭満つ。
災いの果てに 再び野に伏せり。
ぶんどらぬわれらとめざせ 新たな世。
四つ葉のみ望めば幸は来ぬものを。
人間に自我を与えし神さすが。
人間と笑いはつぶらな瞳 花。
ゆいつ耳澄まして未来に降らぬ雪。
 これはつらい冬はもう来ないという意味です。
人間に見られた日々が積り 夏。
ランプ消え私の道に前途なし。
唯一神持たぬわれらに春は来た。
夜風もしゆずる気あらば道に路地。
路地もなく逃れられずに夜の更ける。
技を知に変えてわれらはずんずんと。
わずかな目理想を目指し輝けり。


 暑い日でしたので、少し疲れていて、いつもより俳句の数は少ないとのことでした。出生前診断や震災のことなどを背景にしながら作られたものですが、悲しみが貴重に流れていることがつらかったです。 彼が以前作った出生前診断をめぐる俳句は、横浜市の青葉区を中心にした地域のフリーペーパーのビタママタイムスのコラムに紹介させていただきました。彼は、少しでも自分たちの声が届いてほしいと語っていました。 
2013年7月24日 11時03分 | 記事へ | コメント(0) |
| 家庭訪問 |
ぐるぐると魔物に縛られ解けぬ朝
中学生のF君が今回も俳句をたくさん作って来ました。

夏の森 わだちを探し夜を更かし。
(「わだち」は、F君にとって、震災の年の夏頃まで日本中に満ちあふれていた良い心の象徴です(柴田)。)
 
夏はだか わがよの笑い忘れずに。
磨かれし瑠璃をまなざし りんとする。
時路(じろ)の森 数(すう)をそろえた魔法の夜。
 じかんのみち。すうはかず。よはよる。まほうのためにわずかなむんむんとしたくうきがりにかなったならびかたをしたようすです。
古時計 昔の音をなぜ晩に。
ベルに夢破られた朝 ゆゆしき日。
にぶき耳 ばらばらと降る雨知らず。
敏感な瞳に今日も悩み消ゆ。
強い友 我を支えり 夜の森。
和も捨てず 戦いを無辜 夜論ず。
 むこはむくとにたことば。
日本にも戦争のあり小さく穂。
 ほはころんだこのほほみたいなけばだったののくさです。
ずるき人 戦いを始めて傷つかず。
日本好く若者に守られ 暮らす今。
昔にも小さき未来を夢見たり。
武器を捨て 人は目指せり平和な世 。
自我目覚め 世の中の目そらさずに。
字に夢をたくしたき日 自我目覚め。
小さき野 目止める先 花一輪。
七つにも星が集まり 銀河の前。
人生は呼ばれし使命 応え 生く。
ぶらぶら穂 揺れつつ今日 のどかなり。
ぐるぐると魔物に縛られ解けぬ朝。
罪なき目 めざす未来は空を翔く。

 
2013年7月24日 10時36分 | 記事へ | コメント(0) |
| 自主G埼玉1 |