ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2010年09月21日(火)
高らかな宣言その2
 未来が開けてきました。ランプの明かりが光っています。ランプの明かりがもっと望み通りに光って輝いたらもっと幸多い人生になるでしょうね。わかってくれない人もいるけれどもうすぐランプの明かりが輝いてもうすぐぼくたちが人間として認められる日がやってきます。よい方法ですが本当に不思議です。理想的なやり方ですね。勇気がわいてきます立証するのが大変でしょうが瑠璃色の未来のためにがんばってください。

 いきなり、こんな風に綴り始めたもう成人の☆☆さんに、私は、自分自身のことについて誰かに説明するつもりで書いてもらえないかとお願いすると、次のような文章をさらさらと作ってくれた。

   
    私のわかり方について

 小さい頃からぼくはわかっていましたがなかなか容易に話せず苦労してきました。願いはよく理解していただいてろうそくの明かりをともすことです。望みは勉強をずっと続けていくことです。ごんごん勉強してぼくは世界中のよい物を知りたいです。願いが叶ったらそのときはもう何もいりません。
 望みはわかってもらうことですがぼくは勝手に言葉が口をついて出てきてとても誤解されます。理解してほしいのは本当の気持ちはもっと奥底に秘められているということです。何でも理解できているのにそれを表現することができず困っています。わかってほしいです、ぼくたちの苦悩を。どうしても体が言うことをきかず理解されない行動ばかりとってしまいわかってもらえませんが、ぼくにも気持ちがあります。それをわかってください。
 みんなも同じだと思います。言おうとしても言えなくて困っているだけだと思います。何とかしてぼくたちを人間として認めてほしいと思います。私たちのことがもっと理解される日が来ることを待ちこがれています。
 なぜ世の中の人は物語を作ってしまうのでしょうか。ぼくたちを知恵遅れと見なして冷遇するのはまちがっています。
 唯一わかってくれたのが柴田先生です。ぼくたちに言葉があることをどうしてわかったのか不思議ですが先生のおかげでぼくは言葉を表現でき勇気を持つことができました。わかってくれた唯一の先生ですが少しずつ理解者が広がっています。もっと理解者を広げてもっとよい世界にしたいです。理解者が広がることが願いです。雪のように清らかな夢を持って生きていきたいのでよろしくお願いします。


 いつか必ず、この言葉が世の中に届き、新しい世界が開けてくるのはまちがいないだろう。
2010年9月21日 01時47分 | 記事へ |
| 自主グループ(視覚障害) |
高らかな宣言
 高等部卒業後の進路について悩んでいる○○君は、こんな願いを述べた。

 小さい願いですが理想はよい作業所に行くことですがぼくのことはわかってもらえるでしょうか。理解者がほしいです。勇気がほしいです。願いは理解してくれる人のいる作業所に行くことです。

 そこで私は、ふと、○○君に、自分のことをいつでも自己紹介できるように、自分のことを自分自身で紹介する文章を書いてみませんかと勧めてみた。すると、○○君は、少し考えた後、次のような自己紹介の文章を書いた。

 矩(のり)を越えずという言葉がありますが、ぼくは自分なりに矩(のり)を越えないようにがんばってきましたがなかなか体をコントロールできず困っています。でも自分の気持ちをしっかりと持って生きています。よい理解者がほしいです。よい理解者がいれば地域で生きていけると思います。
 どんなにがんばってもなかなか言いたいことを一人で言うことはできませんがパソコンで気持ちを伝えることができるようになり、ぼくはようやく理解されることができました。 わかってくれる人はまだ少数ですがよいやりかたを見つけることができてぼくももう願い通りの人生を生きられそうな気がしています。
 わかってほしいですがなかなか方法がむずかしいので早く広がってほしいのですがうまくいきません。でも理解しているということを前提に話しかけてください。ぼくはどんなことでも理解できていますから。
 小さいときから一人で字も学習してきたしもやもやした気持ちも乗り越えてきました。
 願いはよい方法が広がることです。
 わかってほしいです。
 ぼくたちのことを見た目で判断しないでください。みんなとても苦しんでいますから。 一人でも理解者が増えてほしいと思いますのでよろしくお願いします。


 力強い言葉だった。きっぱりとしたこの言葉は、一つの高らかな宣言と言ってもよいだろう。
2010年9月21日 01時27分 | 記事へ |
| 自主G多摩2 |
2010年09月12日(日)
10月のきんこんの会は10月5日に行います
 当事者の語らいの場【きんこんの会】10月は5日火曜日に、午後1時半からとしたいと思います。
 きんこんの会は、通常のコミュケーションが困難で、援助によるコミュニケーションによって、思いを表現している人たちの会です。参加は、自由です。
 ウィークデイでなかなかご都合がつきにくい日程で恐縮ですが、よろしくお願いします。
 なお、連絡先は、以下の通りです。

 e-mail yshibata@kokugakuin.ac.jp

  
2010年9月12日 12時33分 | 記事へ |
| 大学 |
2010年09月06日(月)
2編の詩「背を向けずに」「遠い世界に」
 中学生の☆☆さんは、女の子だが、自らを少年に託した2編の詩を書いた。日常会話はおおむねこなせている☆☆さんだが、こうした詩を口頭で綴ることはむずかしく、スイッチの援助を必要としている。詩の合間に、そのあたりの事情を次のように説明してくれた。

 何かを言おうとするとなぜか言葉が消えてしまいますどうしてなのか私にはわかりませんがよいやり方に出会えて本当によかったです

 ふだんの会話はできているので、ここでいう「何か」とは、それを越えたものということになるのだと思われる。それにしても、これだけの長い詩を作って暗誦しているということだけでも驚異なのだが、詩の深さにもまた、目を見張らされるばかりだった。


  背を向けずに

ずっとぼくは待っている 
涙をこぼしながら
夏の終わりの太陽が 
ぼくの若い時を刻みながら
西の空に沈んでいく
別に未来が閉ざされているわけではなく
涙が夏を律しながら
利口なぼくのために
静かに流れたのだ
ロードマップも持たないで
ぼくは楽園を目指して旅に出る
忘れられない思い出と
忘れられないぼくの未練がましい理想を別れ
このロードとロードの間の
何もない平原を突き進んでいく
忘れそうな若者の夢を
何とかして携えながら
若者らしさは失わないで
理想を目指しこのロードを進んでゆく
西の空が暗くなる前に
取り戻さなくてはならない
ぼくの生きれるその力を
黙ったままで
ぼくは顔を高く上げ
夕焼けの向こうで待っている
勇気を目指して


  遠い世界に

そよ風が願いを乗せて吹いてくる
若い理想にぼくは燃え
そよ風を静かに感じながら
泥炭の荒野を越えて吹いてきた風に
よい知らせを聞きながら
りんどうの花の香るのを見つめながら
よい知らせなど理想に過ぎないことを知りながら
よい知らせをやはり期待して
身の丈にあった願いにけして満足することなく
野をまるで乗り越えたかのように
野を越えていくためには
ぼくもどこかを目指して旅立たなくてはならない
遠くに見えるのは見知らぬ国の見知らぬ世界
その世界はなぜそこにあり
何のために人があこがれるのかさえわからない
でもきっとそこにばかり気をとられてはいけない
みんなもきっとこの道を手を携えて越えて
いい世界に向かって歩いていこう
小さい頃の夢の世界ではなく
未来の自分の本当の姿を
もやもやした気持ちを吹き飛ばして
2010年9月6日 09時21分 | 記事へ |
| 家庭訪問 |