青空の澄みわたった冬のある日、高校生の☆☆さんと会った。しっとりとした文章で、気持ちを語り、そして、歌を1曲聞かせてくれた。
とても空が青くていい日でうれしいです。虹も出ていました、夢の中で。わかってもらえた喜びのせいで景色が美しく感じられます。ふだんから言いたいことが言えたらいいけどむずかしいですね。言葉の勉強がしたいですがなかなかチャンスがありません。みんなも同じだと思います。(…)ふだんの生活でも話がしたいですがなかなかむずかしいですね。まだまだ理解者が必要だと思います。私の気持ちを言えるのはこの場所しかないので私は不安です。地域の作業所ではどういう人が待っているのか優秀な職員でなくていいからわかってほしいです。理想はまだまだ現実とはかけはなれていますが理想に一歩でも近づければいいなと思います。
理想の歌を聞いてください。曲です。
私の理想 理解をされて
小さく夢を 紡ぐこと
冒険好きな 私の心
逃れられない 定めに負けず
呼びかけてみよう みんなの胸に
みんなもきっと 私の声に
もっと応えて 私とともに
理想の歌を 歌うだろう
願いはいつも かなわないけど
理想は高く かかげていこう
理想は何も 瑠璃色の
宝石ばかりでは ないことは
私の望みは 知っている
呼んでみよう 未来に向けて
呼んでみよう 私自身に
理想の歌という題です。リズムは変えてください。私は単純なリズムで歌っています。八分の六かもしれません。(歌うたびにメロディが変わったりしますか?)変わりません。(まちがいはないですか?)そのまま聞き取ってもらえました。なかったです。(…)小さいときからよく歌を作っていたのですが絶対に伝えられないと思ってきましたから夢のようです。信じられませんが事実なんですね。うれしいです。夢のようです。わかってもらえてうれしいです。願いがかなってうれしいです。夢みたいです。望みはわかってもらいたいということだけです。よくわかっているとだけわかってもらえればそれで十分です。よみとるのは技術を必要としているからしかたありませんが、わかっているとさえ思ってくれればともかくは大丈夫ですから。この方法は覚えるにはたいへんな努力が必要だと思いますからそれまでは求めません。理解してもらえたらうれしいです。人間として認められたらうれしいです。願いでしたからうれしいです。またお会いしましょう。わかっていただいてうれしいです。よい時間でした。ありがとうございました。わかっていただけてしあわせです。願いがかなってよかったです。
夕方がくると寂しいですが、またあしたがあると思うと元気が出ます。夕焼けも大好きです。理解されてから夕焼けがいちだんときれいに思えるようになりました。私らしく生きていきたいと思いますのでよろしくお願いします。またお会いしましょう。
最後の、「理解されてから夕焼けがいちだんときれいに思えるように思えるようになりました」という言葉は、識字の世界ではよく知られた言葉だ。その方は文字を覚える機会を奪われ、ずっと年をとってから識字教室で文字を覚えた。そのことの感動を手紙にたくした中に、「文字を覚えてから夕焼けがきれいに見えるようになった」とあるのだ。
何度も授業でも取り上げてきたものだが、私自身の目の前で、同じような言葉に出会うとは思っても見なかった。
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2009年12月29日 22時27分
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自主G23区2 |
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Tさんの言葉のメールが届いた。きっと、私のブログの誰かの文章を読んでくれて書いたものなんだと思う。
ぬいぐるみのようなじんせいもなける。
さびしいときにともとゆっくりといまははなしがしたいのにひとりがやっぱりわたしにはまっている。
ぬいぐるみのようなじんせいをおわりにしよう。
いぬたちがぼくをげんきづけてくれる。
そして、犬の写真も一緒だった。彼を元気づけてくれる犬の澄んだ瞳が印象的だ。
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2009年12月28日 23時23分
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12月6日も、青年学級では多くの人が言葉を語った。その中から、Sさんの詩を紹介したい。多くの方の言葉は、パソコンではなく、手を振る方法でノートに書き取ったものなので、整理に時間がかかってしまっているが、Sさんの詩は、パソコンで綴ったものである。
可能性に挑戦しよう
未来の楽園のために
勇気を出して理想の国をめざしていこう
勇気を出して未来と過去の呼び声を断ち切って
私の今を大切にしていこう
未来の夢は自分の理想
未来の希望を心にかかげ
未来に向けて歩いていこう
聞いて未来の伝言を
聞いている過去の淀んだ物語を
じっと耳をすませていると
心と心の喉元に
美人の咆哮が聞こえてくる
小さな美人の心の中に
勇気のかけらが眠っていることを
誰も知る人はいない
人間としていい生き方を求めてきて
気持ちをうまく表現できず
ひとりぼっちで生きてきたぼくの
ゆいつの願いは
こうしてばい菌のように生きるのではなく
みんなを人間として受け入れられる世の中がくることだ
いい自分を作っていきたいと思う
みんなといっしょにこの道を歩き続けていきたい
小さいときからのランプのような願いだ
過去のきびしさと未来への切ないばかりの希望が語られた詩だ。一般就労をしていう彼には、けっこうストレスがたまることもすくなくない。心ない言葉もこれまでもたくさんかけられてきたことだろう。そんな彼が懸命に未来の可能性にかけようとする気持ちに、心から感動した。
敏感な言葉をありがとうと言いたいです
最後にこう綴って彼はスイッチから手を放した。
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2009年12月19日 00時01分
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町田市の本人活動の会「とびたつ会」のTさんは、支援者の松田さんとウィークデイの夜に、もう何年もパソコンで言葉を綴る練習を続けてきた。特製のマウスを足で操作できる彼は、なんとか、その方法で文字を綴ろうとしてきたが、なかなか長い文章をスムーズに綴ることはむずかしかった。ところが、この数ヶ月は、松田さんが徐々に今私がやっている方法を取り入れるようになって、だんだんと文章が長くスムーズになってきた。
ここ2回の文章を紹介したい。
そとにさがしにいきたい
だいじななにかを
くるしいときにほんとにすくわれるろうのようなすくい
せかいじゅうてのとどかないほんとのしあわせ。
よのなかがしあわせになるように
すくいをさがしに
ひとにてつだってもらいながら
さがしにいきたい。
ぬりなおしたいいろ けしたいいろは
むねのなかにあるさみさ(さみしさ?)。
ねているあいだにいとしいほわいとにぬりかえたい。
くるしいきもちもいとしいほわいとでぬりなおしたい。
なきたいきもちをぬりかえたい。
さびしいきぶんをぬりなおしたい。
ぬりかえればきぶんがらくになって、とてもわたしはうれしい。
これからも、また、彼の言葉は紹介を続けていきたい。
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2009年12月18日 23時54分
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11月のある日、20代前半の☆☆さんをたまプラーザキャンパスにお招きした。6月に引き続いて2度目だ。今回は、☆☆さんのことを以前から取材している音楽療法の雑誌の編集者の方もご一緒だった。
歌が大好きな☆☆さんだから、必ずや歌を作っているにちがいないと思ったので、今回の日程を打ち合わせる時のメールに、歌を聞き取りたい旨を書かせていただいておいた。
最初、少し、手をふる方法で話して、彼女のパソコンを開いていただいた。彼女のご両親はスイッチの介助がおできになるので、毎日日記を書いているパソコンである。
感激です。いい気持ちでした。明るい光がさしてきました。人間として小さく夢を紡いできましたが、ようやくかないました。
勇気がほしいです。
願いは私のもっと私らしさを表現したいです。未来が開けてきました。いい気持ちです。
ずきんとするような痛みを感じることもありますが、それも乗り越えていくことができそうです。ぬいぐるみのような生活にもお別れです。人間として認められてうれしいです。小さいときからの夢でした。
そこで、歌のことに話題を向けた、するとさっそく、歌詞が書かれた。題は「ぬいぐるみの歌」。
小さいぬいぐるみ なぜ泣くのだろう
きのうの悲しい思いかしら
泣くのはやめて みんなも同じ
ひとりぼっちのさびしさに
ろうそくをともして生きている
小さいぬいぐるみ なぜ泣くのだろう
人生はもっと輝いているよ
そして、手を振りながら「ドレミファソラシド」と言いながら、ひとつずつ音をひろっていった。☆☆さんは、この方法は初めてで、驚いた様子ともに、こみあげるような笑いを浮かべながら、メロディをつたえてきた。
そして、歌を伝え終わると、次のような感想をくれた。
信じられません。歌を聞きとれるとは思いませんでした。小さい頃から気持ちをしずめるために歌を歌っていました。理解してくれてうれしいです。未来が開けてきました。うれしいです。
そこで、私はよくばって、まだほかの歌はありますかと尋ねると、
もっとありますが聞いてもらえますか。
そして、「未来の夢」という歌が書かれた。
人間として生まれて生きてきて
私は夢をかなえたい
未来の夢は願いの理想
光の中で光り輝き
太陽のように 遠くをてらす
私の私らしさを願いながら
私は私の理想を紡ぐ
そんな時、数名の学生たちが授業を終えて入ってきた。6月にも☆☆さんと会った学生たちだ。
☆☆さんとしばらく語りあっているあいだに、音楽に造詣の深い編集者の方にお願いして楽譜にしていたいたので、研究室においてあるギターの伴奏で、歌ってみることにした。
☆☆さんの心の中で静かになりひびいていた歌が、同世代の若者の歌声によって部屋中にひびきわたった。すばらしい瞬間だった。
☆☆さんも、本当に喜んでくださった。
後日、女子学生が☆☆さんの歌について語りにやってきた。「ぬいぐるみの歌」は、やっぱり、自分のことなんですよねと言いながら。歌を通じて、☆☆さんの思いは、深く伝わった。
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2009年12月12日 02時38分
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