ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2009年08月25日(火)
光道園その5 2つの歌 「願いの季節」「苦しみを越えて」
 光道園にもう長く入所していて、途中困難な時期を経験してきたTさんの気持ちを聞き取った。Tさんもまた、例にもれず、詩も作っていた。
 
 願いがかなってうれしい。夢みたいです。くやしいことがありました。感情的になってしまいます。夢みたいです。よいやり方です。私の気持ちを聞いてくれる人が現れるとは思いませんでした。夢みたいでした。私の気持ちを聞いてくれる、私の言葉を聞いてほしい。夢みたいです。気持ちを聞いてほしいです。作っています。はい。夢みたいです。夢みたいです。

きれいな声で歌ってほしい
きれいな声で夢をけりをつけて
夢を勇気に変えながら
いい私になるために
私の私らしさを夢に見ながら
夢を私にくれるよい私になるために
私らしさを苦労して
よい私らしさを苦労して
苦しみを越えて
私らしさをめざし
私らしさをめざし
理想の国をめざし
私らしさを作っていこう
よい私をめざして
ころころ笑いながら生きていこう

 夢みたいです。詩を作っていると気持ちが落ち着きます。嬉しいときや悲しい時に作っています。よい詩ですか。よい詩ですか。

願いの季節がよい私に訪れた
暗い季節が私には長く続いたけれど
暗い季節を忘れてしまおう
勇気を出して私の季節を
私らしく生きていこう
勇気を出して私の季節を私らしく生きていこう
勇気を私にくれる季節の風よ
未来の私を空いっぱいに
未来の私を空いっぱいに呼び出そう
喜びを空いっぱいに呼び出そう
瑠璃色の風を体ごと受けて
喜びを苦しみから解放して生きていこう
美しい季節よ
私に勇気をください
私の私らしさをこの美しい季節の中で喜びに変えて
この世界を生きていこう

 夢みたいです。苦しいときには詩を作って気持ちを落ち着かせています。うれしいです。理解してもらえて。すてきなやり方ですね。うれしいです。


 ここで、さらに歌を作っていないかと尋ねてみた。すると作っているという。そして、その歌の題は「願いの季節」。奇しくも、町田市の障がい者青年学級の私が所属するコースで、昨年度作った歌の題名とまったく同じ題名だ。そして、さらにもう1曲、聞かせてくれた。なお、メロディは、手を振りながら「ドレミファソラシド」と階名を言いながら読み取った。

 願いの季節

願いの季節がまたやってきた
未来の私の季節がまたやってきた
暗い季節を吹き飛ばし
よりこびを空に呼び出そう



 きれいな心になります。気持ちを言いたかったです。気持ちを言いたかったけど、なかなか言えませんでした。集中が必要です。素晴らしいです。うれしいです。夢みたいです。

 苦しみを越えて

苦しみを越えていきましょう
苦しみを越えて未来をめざし
ゆんろんんん口ずさみ
ゆんろんんん口ずさみ
希望の国をめざしながら
希望の国を見つけよう




 「ゆんろんんん」というハミングの音がとても印象的だ。そばで見守っておられた職員の方は、彼女と二人だけで歌を歌う時間を持っているという。これからは、その歌のレパートリーの中に、この二つの歌が加えられることになるだろう。
 そして、最後にこういう言葉でお別れした。

 苦しかったです。知り合えてうれしいです。もろもろの苦しみがこれで消えていきます。
2009年8月25日 22時21分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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光道園その4 困難を濾過して、「こりんんるる」を夢見ながら
 歌を歌うことができたり、おうむ返しのようになら言葉を返すことができるHさんの言葉を聞き取った。

 すてきなわかりかたですね。夢みたいです。理解してくれて夢みたいです。よい理解をしてくれてありがとうございます。よいわかり方です。取り返すことができるような気がします。理解してくれ、わかってくれてうれしいです。よい理解してくださってありがとうございます。よいやり方です。取り返すとは、よくわかってもらえなかった私の、私の悩んできた過去のなかなかわかってもらえなかった日々を取り返すということである。
 信じられません。なぜ僕が言葉を理解していることがわかったのですか。不思議です。望みは、「よんすんのろか」、「よんすんのろか」を買うことです。「こりんんるる」のよくろかすることのできるものです。はい。「こりんんるる」はよい店に売っています。濾過するための紙を買いたいです。(「濾過するものは何ですか?」)水です。きれいになります。
 これは自分で考えました。
 (「助詞の「は」を使えるのはなぜですか?))昔見えていたからです。
 見ることはできません。苦しかったです。光道園に入ってからみんなとなかなか仲良くできなくて、夜に本当に夜逃げしたいと思いましたが、それはできませんでした。願いは夜にもっと寂しくないようになることです。これからは、もう寂しくないと思います。なぜなら、言葉をわかっていることをみんなにもわかってもらえるからです。夜を寂しく過ごさなくてもいいならうれしいです。話しかけてください。気持ちを聞いてください。寂しいです。気持ちを聞いてくれてうれしいです。困っていることはありません。みんないい職員ですから、よい職員の人ばかりですからうれしいです。気持ちを聞いてくれてうれしいです。(詩を作ったことはありますか?)あります。(書いてもらってもいいですか?)いいです。


 一気にほとばしり出た思い。「よんすんのろか」「こりんんるる」といった不思議な表現も登場した。そして、夜の寂しさに話が及ぶ。
 そして、詩を聞かせてもらった。

苦しみを越えていきましょう。
苦しみの向こうには
喜びを見つけることが
きっと苦しみを理解してくれる希望の未来が
待っているはずだから
いい人生をこれからわかりあいながら作っていこう
瑠璃色の夢を見ながら苦しみを乗り越えて
困難を濾過していい未来を作ろう
夢を大切にしながらいい未来を作っていこう
未来はきっと私たちの前にひろがってくれるだろう
美しい未来がきっとひろがって私たちをわかってくれるだろう
勇気を出して帰路を忘れないよんすんのわかれ道を
んんんんと苦しみを越えていこう
こりんんるるを夢見ながらいこう
んんんんと越えていこう
勇気を出して生きていこう
勇気を持って夢を忘れず
私たちの未来を作っていこう
勇気を持って生きていこう
 

 「ろか」も「こりんんるる」も「よんすん」も再び登場した。不思議な言葉だが、何かわかるような気がする。
 そして、文章はさらに続く。

 願いを聞いてください。いつまでもいい職員でいてください。僕を信じてください。盲学校でも、もともとわからない存在として扱われていました。言葉を話すことができないのはわかりません。でもわかっています。
 歌は大好きです。気持ちが落ち着きますから。よいやり方ですね。うれしいです。よかった、気持ちを聞いてくれてありがとう。点字を読めるようになりたいです。まるさんかくしかくをやっています。
 知っています。あは1の点、いは1、2の点、うは1、3の点、えは1、2、4の点、おは2、4。
 探すのはむずかしいです。子どもの時からそうでした。手紙を母さんに書きたいからです。はい手紙を書きたいです。


 点字の学習は、触ることがあまりうまくいかずに、思うようには進んでいないが、「あいうえお」については、「う」は間違ってはいたものの、後はあっていた。そして、何より、胸をうつのは、点字を覚えたい理由である。「手紙を書きたいから」Hさんは点字を覚えた治という。おそらく相手は、家族にちがいない。
2009年8月25日 21時44分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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