施設で暮らす○○さんのお宅を訪問した。小1からおつきあいしていながら、34歳になって初めて文字を綴ることのできた方だが、最初の時の、喜びのトーンは見られなくなり、せっかく言葉がわかることが明らかになったのに容易に進まない理解と、相変わらず放置されている仲間たちのことが、言葉を重くする。
聞いてほしいことがあります。なぜ自分たちの気持ちは聞いてもらえないのでしょうか場場を考えてもぼくたちの気持ちはもっと尊重してもらえたらうれしいです。理解してほしいです。勇気を出していいたいと思うのですが敏感に感じてくれる人が増えたらいいとおもいますがなかなかむずかしいようです。夢をかなえることができたらうれしいです。未来はわかってもらうことができたらいいなと思いますがまだまだむずかしいのでしょうか。人間としてやっと認められたので勇気を出して住んでいる場所を変えていきたいと思います。来年いっぱいぐらいには来てもらえますか。人間らしい生活がしたいです。ぼくだけではなく仲間のことが心配です。人間として夢を大切に生きていきたいと思います。人間としての気持ちを大切にしたいです。いい未来がほしいです。理解してもらいたいです。
一歩一歩前進はしていることを言い訳のように伝えて、最近、多くの方々から歌を聴き取っていることを伝えたところ、次の詩とメロディーを教えてくれた。
願いの実がなる花が咲く
昔の夢を紡いできたが
実のなる花はまだ咲かぬ
実のなる花を夢に見て
ぼくは理想の時を待つ。
「まだ咲かぬ」という言葉や、語りそのものの寂しげなメロディーが胸にささる。そして、さらに文章は続いた。
曲を理解してもらえるとは思いませんでした。びっくりしました。敏感さに驚きました。あっています。自分で口ずさむのとは感じがちがいました。いい気持ちです。小さいときから曲を作っていましたがまさか聞いてもらえるとは思いませんでした。
(歌は)大好きでした。おかあさんがよく歌ってくれました。きりがないくらいたくさん歌ってくれました。いいおかあさんです。
(施設になかなか来れないのは)忙しいからしかたありません。いつも小さい孫の世話でたいへんです。がまんしていますが心配しています。元気かどうか。自分はだいじょうぶですから。体にに気をつけてください。(面会の時の)散歩は無理をしないでください。ぼくが体重が重いからです。(体をつっぱらせるので重く感じることについて)力がはいるのはしかたありません。(勝手に力が入ってしまうんですよね。)そうです。勝手に力がはいってしまいます。(力がぬける薬でもあればいいけど)薬はこわいです。ぼくたちは眠らされてしまいますから。薬についてもぼくたちの意見を聞いてほしいです。小さいときからの願いでした。
だいじょうぶです。また来てください
暖かい家族にかこまれて育てられた○○さんの思いは、いつも暖かい。ご両親のことをしきりに気遣う心のあり方は、すでに自立をとげているのみならず、人間としての成熟がある。
|
2009年8月16日 08時05分
|
記事へ |
コメント(0) |
トラックバック(0) |
|
家庭訪問 |
トラックバックURL:http://blog.zaq.ne.jp/yshibata1958/trackback/258/
3月に高等部を卒業した男性と関わる前に、3人で、意見交換の場を持った。話題は、2日後のHさんを招いてたときのことだった。
誰の発言ということは、うまく整理できていないが、1台のパソコンにそれぞれが言葉を書いていったままに記したい。
Hというひとはどこにすんでいるのですか
(千葉からです。)
ちぱけんからどうやってくるのですか
(バスだそうです。)
(H君の創作童話について)
すてきなはなしでしたか
じぶんはまだよんでいないのでわからないけどすごいね ものがたりをつくるなんて
Hくんはなんさいですか ゆうきがでてきますひいでたさいのうですね
にんげんとしてみとめられてよかったね
にんげんとしてみとめられてもっとみらいをひらいてほしいね
Hくんのしょうがいはなんですか
(自閉症です。)
じへいしょうといってもこころはわたしたちとかわらないのでしょう
ゆうきをもらえたらいいね
Hくんのはなしはだれがしっていたの
へーりかいしてくれたらうれしいね
ぼくたちのことをにんげんとしてきもちはおなじだとおもうからきたいしています
みらいがひらけるといいね
なにをきけばいいのですか
ねがいはゆうきをもらうことです
りかいをしてくれたらうれしい
ゆめをもっていきることがだいじだということです
にんげんとしてみとめられることがだいじだとおもうのでよろしくおねがいしますといいたいさです
りそうはりかいされることですがなかなかむずかしいとかんがえています
どうすればりかいしてもらえるのでしょうか
りかいをしてもらいたいです
なやんでもはじまらないのではやくこうどうにうつそう
なんでもいいからはじめることがだいじだとおもいます
じぶんのきもちをにんげんとしてうったえていければいいとおもいます
それにはりかいしゃをふやすひつようがあります
じぶんたちのきもちをはやくりかいしてもらうひつようがあります
みんなのきもちがひとつになればできるとおもいます
りかいしゃがひつようです
まずはゆうきをもってじぶんたちのこえをあげていきましょう まんなかにHくんをおいて
こんなんをのりこえていけばいいのではないでしょうか
思いのほか、進んでいく話に、やはりみんなが語り合うことの重要性を痛感するとともに、Hくんとともに、新しい時代が生まれてくる予感がした。
地球上の楽園に理想的な夢をまき、夢を笑いながら未来に向けて育てよう。
きっと理想の花が小さな実をつけて、みんなに笑いをくれるだろう。
わかってくれない人たちを待ち続けるよりも、一人でも多くの理解者を増やそう。
希望はわかってくれる人がいれば理解者が少なくても大丈夫です。
ゆいつの夢はわかってくれる仲間と困難に向かって
みんなでもっと勇気を出していければいいと思います。
詩です。歌ではありません。
ここで、あえて、歌を作っていないか尋ねてみたところ、あるという。そして、次の歌詞が書かれた。
願いの輪の中に ぼくらの夢を結び
身につけた理想をランプの光のようにともしながら
勇気を出して船出しよう
勇気が胸にあゆれたら
ランプはやさしく照らすだろう
やさしいランプの光のせいで
夢が明るく光るだろう
そして、歌について次のコメントをくれた。
小さいときから歌をいつも作っていました。ランプはいつもかあさんが寝る時につけてくれます。忘れられない美しさです。天井の電灯です。人間としての夢の象徴です。理想てす
|
2009年8月16日 02時14分
|
記事へ |
コメント(0) |
トラックバック(0) |
トラックバックURL:http://blog.zaq.ne.jp/yshibata1958/trackback/257/
二人目は、32歳の男性だ。筆談によって少しずつ言葉を発し始めた彼に、2スイッチワープロでやりとりをした。
小さいころから話したかった。入院しているおとうさんが心配です。勇気が出てきました。びっくりしました。なぜわかるのですか。不思議です。力を入れていないのにどうして伝わるのですか。字を考えていて、ここだと思っています。びっくりです。人間として認められたような気になります。小さい時からの夢でした。小さい時からたくさん詩を作ってきましたので聞いてください。
果敢に挑み 人生を生きる
人生は闘いだから負けていいはずがない
敏感な自分の心を研ぎ澄まし
敏感に耳をすませて
人間としての未来をかちとろう
未来はきっと敏感な住んだまなざしに
凛とした姿を現すだろう
小さい時から場には入れてもらえず
いつも一人ぼっちだったから未来は夢だった
敏感な心が夢を持ち
敏感な心が願いをかなえ
未来が明るく広がった。
年齢の重みを感じさせる詩だった。闘いとしての人生に果敢に挑むという言葉が、これまでの日々を物語るようだった。詩の最後の方が、今まさに言葉を綴れることの喜びを語っているような気がしたので、この場で作った部分もありますかと尋ねると、そのことに答えながら、次のように語ってくださった。
はい。前から作っていた詩につけくわえました。詩を作っていると気持ちが落ち着きます。願いでした、自分の詩を聞いてもらうことが。
さらに、もう一篇綴られた。
静かに望みの花が咲く
人間として生まれて生きてきて
願いをたくさん持ってきて
勇気をたくさん敏感に育て
分相応に生きてきた
みんなに人間としての誇りを伝えきれず
静かに一人生きてきた
夢は祈りに変えて
一人で静かに生きてきた
勇気を持って楽園を目指し旅立とう。
そして、次のような感想が書かれる。
未来が開けてきました。びっくりしました、夢を見ているようです。人間として認められた気分です。小さい時からの願いでした。理解してくれてありがとうございます。詩を作っていることがどうしてわかったのですか。はい。わかりました。
ここで、さらに歌を作っていないかを尋ねると、あるとおっしゃる。そして歌詞が書かれた。
人生にみんな夢をもとう
一人で夢を育ててゆけば
未来はきっと開けてくるさ
一人で夢を勇気に変えて
勇気をもって夢をそらいっぱいにひろげよう。
そして、手を振りながら「ドレミファソラシド」と尋ねながら、メロディを聴き取った。そして、それを受けて次の言葉が書かれる。
信じられません。未来が開けてきました。夢みたいです。理想的な方法ですね。理解してもらえてうれしいです。未来が開けてきました。理想のやり方です。見たこともないやり方で驚きました。夢みたいです。
ここで、闘病中のお父さんへ手紙を書いた。
とうさんこれまでぼくを育てていただいてありがとうございます。勇気を出して病気と闘ってください。敏感な心で勇気を出してください。わたしたちをやさしく見守ってくれるからおとうさんが大好きです。理解してくれる人が現れましたからぼくはもうだいじょうぶです。理想的なやり方です。わたしたちはみんな言葉を持っているということをわかってもらえてしあわせです。勇気が湧いてきました。わたしたちのことを未来に向けて飛び立たせたいと思います。
ずっっしりと重い出会いだった。
|
2009年8月16日 01時18分
|
記事へ |
コメント(0) |
トラックバック(0) |
トラックバックURL:http://blog.zaq.ne.jp/yshibata1958/trackback/256/
最近、精力的に活動しているグループがある。構成メンバーは、小4の女の子、中2の女の子、3月に高等部を卒業した男性、そして32歳の男性が中心メンバーだ。そのグループでは、コミュニケーションの手段として、援助による筆談を用いており、大きな成果を上げている。指で手のひらに書く方法で、相当なスピードで、会話が可能となっている。
私は、私の2スイッチワープロやあかさたなと手を振る方法でコミュニケーションをするのだが、みんな、方法をたくみに使い分けて豊かにコミュニケーションをしている。今回は、中1の女の子がお休みだったので、3人の方々と関わった。
この日は、実は、2日後に、自閉症の作家として有名な高校生を招くという企画を控えており、やりとりは、そのことをどこかで意識したものとなった。
最初は、小4の女の子。家族のことを話した後、次のような思いを語った。
未来が開けてきました。夢が実現しそうです。見たこともないような景色が開けてきました。未来が私にも美しくひろがってきました。自分の道は自分で開かなければいけないと思うけど、未来は理想的なものとなってほしいです。私の希望は人間として理解されて生きていくことですが、なかなかむずかしそうです。勇気がほしいです。勇気がほしいです。勇気をもらいたいです。理解してほしいです。みんなに私たちのことを。人間として生きようとしていることを。自分たちの声をみんなに届けたいです。人間として認めてもらいたいです。きっと話ができると期待しています。未来が開けそうです。
ここで、歌について尋ねてみた。すると作っているという。そして、次の歌詞を書いた。
気持ちを聞いてください
私の人間としての思いを
自分一人で生きてきて
一人で夢を紡いで生きてきた
光はいつも遠くを照らし
私のとこには届かなかった
人間として生きたいと毎日願い
光を求めて生きてきた
みんなと話がしたいと何年も願いながら
望みを捨てずに生きてきた
そんな私が願いをかなえ
夢がかなって言葉を持った
希望と勇気が湧いてきた
自分の言葉で気持ちを伝えたい
願いをみんなに伝えたい
途中、何か困ったような発声が続く、いったん中断してそのわけを手で尋ねてみると、言葉があふれて止まらなくなり収拾がつかなくなったらしい。
そんなこともあるんだと思いながら、とりあえず、書ききってもらった。その後、彼女が、メロディのさわりを聞かせてくれた。
ドシラドドシラソラソド
ドシラソドシラソラソソソドシシド
後は、筆談がとても速いお母さんが聞き取ってくれることになった。
彼女は、この後、2スイッチワープロで英語にも挑戦。
BOOK PAUSE
I HAVE A HOPE
と綴った。どこで覚えたのと聞くと、「英語であそぼう」がいちばん役に立ったそうで、海外旅行にでかけた際も、けっこう英語が理解できていたという。
可能性は限りなく広がっていく。
|
2009年8月16日 00時15分
|
記事へ |
コメント(0) |
トラックバック(0) |
トラックバックURL:http://blog.zaq.ne.jp/yshibata1958/trackback/255/