Sさんの記した言葉を紹介したいと思います。高校3年の終わり、長い沈黙を破って初めて気持ちを言葉で表現したSさんのその後の歩みはめざましく、今や彼の周りには、お母さんをはじめとして50音ボードや筆談で彼の気持ちを聞くことのできるヘルパーさんなども増えてきました。その歩みを支えた彼自身の思いがここにはあります。
理想と闘いについて
銀色の風はなぜ私たちすべてに吹かないのだろうか。なぜ私たちは運に左右されて生きていかなくてはならないのだろうか。
小さい頃から運命に翻弄されてきたからなぜ私たちをもっと理解してもらえないのかと悩んできた。わざわざ僕たちを勇気づけてくれる人もいたけどなかなかそういう人は現れなかった。ずるい考えをすることもなくひたすら人間として認められるためにはどうすればいいかを考えていたのでよい方法に出会えたときには本当にもうこれで人間として認められる日が来ると思ったけれどわずかな人しかわかってくれず、とても悲しかった。
だけどこれこそが人間として生きていくことだと気がついた。
残念ながら僕たちにはまだ力が足りない。僕たちはもっと闘いを続けていくしか生きていく道はなさそうだ。闘いは決して人を傷つけるためのものではなく人の心にほんとうの愛を灯させるための闘いだ。
小さい時からどこそこの誰と言われることさえなく生きてきた僕たちだが僕たちを受け入れる人に援助してもらいながらもっと闘いを続けていきたい。つらいとか苦しいとか、人間だから初めて感じられるものなのだから。
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